07:楽園が欲しい
それは次の任務までの間が少しばかり空いた時の話だ。
サイラスに加え、新入り2人に挟まれたレックスはぼんやりと増えたメンバーを見つめている。内心では大変満足だ。何せ、一気に班員が2人も増えたし根を上げるようにも見えない。
そんな中、不意にカイルが訊ねた。
「みんなはもし、この仕事を退職したら何かやりたい事とかあるんスか?」
まったく脈絡の無い話。アテも無いだろうにけれど考えてしまうような、そんな話。案の定、その言葉を真に受けたサイラスが口を開いた。
「俺はイリアと暮らすよ。ま、そんな日が来るとは思えないけどなぁ」
「そもそも、先輩はそのイリアさんって人と同棲する約束はちゃんとしてるんスか?」
「えっ、そんな夢のない事言うか!?夢のある質問しておきながら!?」
「あ、それとこれとは別ッス」
「そういうお前はどうなんだよ、カイル」
へへ、とカイルは笑った。それなりに歳を積んでいる人外の笑みとは思えない程に無邪気だ。質問者でありながらあまり真剣に考えていない様子がありありと分かる。
「俺はカノジョでもつくるッス!」
「いないのか・・・」
「いるわけないじゃないッスか!こんな、いつ死んじゃうか分からない仕事しときながらカノジョなんて!」
「うぐぐ・・・正論過ぎてムカつく・・・」
「イーヴァはどうッスか?」
ぼんやりと窓から外を見ていたイーヴァがのろのろと首を動かし、カイルを見つめる。感情の色が伺えない双眸を見ているとほんの少しだけ怯んでしまうのだが、同期であるカイルはそうでもないらしい。その目を正面から見据えている。
「海に行きたいです」
「海ぃ?ギルさんに頼んだら連れてってくれるんじゃないんスか?別に」
「どうしてギルバードさんが?」
「え?アンタ等仲良いんじゃないの?」
「別に・・・」
「止めろよ!ギルさん泣いちゃうだろ!あーもー、レックスさんはどうなんだ?」
まったく唐突に話題を振られたレックスは瞬きを繰り返し、慎重に考えた後にこう答えた。
「俺はお前達がいるなら終わらなくていいぞ!うん!」
「退職したらって話じゃなかったッスか?」
カイルの意外にも鋭い発言は聞き流した。