創作屋さんにお題50

05:空き缶蹴って遊ぶやつだよ


「あなた達、目がチカチカしてこないの?もう3時間も経つわよ」

 呆れたような声にサイラスはパソコンのディスプレイから目を離し、足を組んで椅子に座っているドルチェを見やった。案の定呆れ顔の彼女だったが、視線はイーヴァが操作するパソコンの方を向いている。

「まあ3時間構ってくれと言い続けている俺達も大概暇だがなぁ!」
「まったくだ・・・」

 ゲラゲラと笑うレックスを尻目に本に視線を落としていたギルバードが同意する。現在、人気のないパソコン室には2班オールメンバーが揃っていた。珍しい事この上無い光景に、機関の職員達が顔を青くして廊下を足早に去って行く。何か災いの前触れだと思われているのだろう。
 先輩達の言葉を気にしたのだろうか――否、イーヴァに限ってそんな事は無いだろうが、それでも新入りは古株達にこう尋ねた。

「交代しましょうか?」
「えー!ちょっと困るッス!これからオレと大型モンスター討伐しに行くって約束したじゃん!!」
「私達が出来るゲームを、ドルチェさん達が出来ないとは思えませんが」
「リアルとゲームは違うッス!あの人達に貸したらキーボードも壊れるし、何よりマウスが爆発しちゃうッスぅ!!」

 そんな事より、とレックスが口を挟む。サイラスは再びゲーム内では手練れのハンターとして名を馳せている後輩達の援護を開始しようとしたのだが当然ながらその手は止まった。

「缶蹴りしよう。お前達もそろそろ身体がカチコチだろう?おじいちゃんと遊んでくれんか?」
「缶蹴り、とは何でしょう?」
「オレも知らないッスね。そもそも、カンって何のカンの事ッスか?」

 本を読む為掛けていた眼鏡をクイッ、とあげたギルバードが淡々と缶蹴りのルールを簡易に説明した。一つ頷いたカイルがこう提案する。

「何かよく分からないんで、先輩達も狩りゲーしましょうよ。楽しいッスよ!」
「あーもー、あたし、昼食べて来るから」

 憤慨したドルチェが出て行ってしまった。当然である。