04:パソコンが壊れた?
「うん?ドルチェ、画面が真っ暗だ」
「そうね。・・・え?」
パソコン室にて。不意に画面に視線を移すと画面が真っ暗だった。レックスは首を傾げ、マウスをカチャカチャと動かすが画面は暗いままだ。どうしたものか、とドルチェに問い掛けてみるも、彼女もまた首を傾げている。
「困ったわね。殴ったら直るんじゃない?」
「ううむ、こいつ等脆いからなぁ。俺達がグーパンしたら壊れるのではないか?」
「それもそうね。あれじゃない、確かギルバードが昔言ってたわ。斜め45度の角度から手刀を叩き込めば直るって」
「暴力的だなぁ。しかも、それは家電の話じゃなかったか?」
画面は現在、光の反射で自分達の顔が映し出されている。うんともすんとも言わない。不意に電源を入れるボタンを見てみるが、緑の光が明滅しておりパソコンの電源が落ちたわけではないようだ。
「あー、困ったなぁ。ギルに言えば戻るか?」
「別のパソコン着けたら?もういいじゃない、コイツは」
「ううむ、ゆーえすびーに記録しておらん!データ消えるなこれは!」
「もう!だからあれ程こまめに保存しなさいって言ったでしょう!・・・それで、どのくらい書類終わったの?」
「半分。これ引き抜いたらどのくらいのデータ飛ぶかなぁ・・・」
ガラッ、と部屋のドアが開いた。同時にカイルが入って来る。神妙な顔をしていた新入りはこちらに気付くと弾けんばかりの笑みを浮かべた。心なしかゴールデンレトリバーに見えない事も無い。
――こいつにパソコンを直す程の知識はあるのだろうか。
可愛い新入りが現れたが、捌いた書類の命が懸かっているので手放しでは喜べなかった。
「うわー、レックスさん達がここにいるのって何だか変な感じッスね!」
「あら坊や、あたしだってパソコンくらい使えるのよ?」
「へー。あ!オレ、2人にギルさんからの伝言持って来たんスよ!どのくらい仕事終わったのかって!!」
言いながら画面を覗き込んだカイルはうん?と疑問の声を上げた。
「あれ、もしかしてまだ始めてないんスか?うわー、それちょっとマズイッスよ!マジで部屋の空気殺伐!イーヴァじゃなかったらあの空気は耐えられないッス!ギルさんマジ恐っ!」
「えー、面倒臭いなぁ。あいつ怒らせたら恐いし」
「じゃあ早く仕事するッス!」
「見ての通りよ、カイル。パソコンが壊れたの。一応電源は入ってるみたいなんだけれどね、画面が・・・」
そうなんスか、とカイルが再び画面を覗き込んだ。
「こうなる前、何してたんスか?」
「聞いてよワンちゃん、レックスったら寝てたのよ?だから叩き起こして、ちょっと乱闘騒ぎ起こして、気付いたらこうなってたの!」
「えぇ・・・それ、腕か何か当たって壊したんじゃ――あ」
何かに気付いたらしいカイルが画面の下の方に触れる。と、いきなり画面がパッと明るくなり、お馴染みWordの画面が姿を現した。
「直ったのか?ほう、カイル、お前はなかなか機械に強いな!」
「いや、強いっていうか・・・ディスプレイの電源切れてただけなんスけど。ケンカしてる時に電源ボタン触ったんじゃないんスか・・・?」
初歩の初歩ッスよ、と溜息を吐くカイルの声はもう耳には届かなかった。