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が、当然あの上級魔術をまともに発動させたのだ。全員が軽傷で済むはずもなかった。
「うわぁ、酷い怪我ね。運んであげたいのは山々だけれど、あたし達、力仕事はちょっと・・・」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ・・・」
ぐったりと蹲っているのはサイラスである。言いはしなかったが、彼は盾役として誰よりも前にいたわけであの爆発から爆風まで直撃している事になる。右足には酷い火傷、左腕は吹き飛ばされた時に出来たのだろうか、深い裂傷がある。とてもじゃないが自力で歩かせるのは無理だ。
「今の爆発なら、本部にまで音が届いているでしょう。誰か救援に来るまで待ちますか?」
「あたしと一緒にならサイラスを運べないかしら?」
「水中でしたら」
「よねぇ・・・」
もういい、とサイラスが深い溜息を吐いた。普段は気にした事の無い男女比がここに来て悩みのタネになるとは。人生とは分からないものである。
「誰か呼んで来てくれよ。というか、連絡機器は・・・?」
「無線も電話もありません」
「どうなってんだようちの職場」
「誰か来るとは思いますが、私が本部まで一度戻って救援依頼を出して来ましょうか?」
イーヴァの提案にドルチェは首を振った。否定の意として。
「正直、まだ辺りに何かいないとも限らないわ。怪我人もいる事だし、単独行動はオススメしないわねえ」
「そうですね。サイラスさんは頭数には入りませんし」
「なぁ、俺って壁役頑張ったよな!?ちょっとは優しくしてくれよ!」
「・・・?すいません、おっしゃる事の意味が分かりません」
サイラスが悲しそうに嘆息した。