第2話

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 そんなギルバードの不信感をものともせず、カイルは世間話を止めない。ほとんど右から左へと聞き流していたが、不意に彼の言葉が耳に引っ掛かった。

「そういえば、晶獣ってどこから湧いてるんスかね。あの飼い主とか名乗ってる《RuRu》の連中は出所知らなさそうだし」
「生産工場とかあるのかもしれないな」
「オレ、少し思ったんスけど」

 ずずずっ、とカイルはうどんの汁を啜る。きっちり残さず食べる派らしい。ニヤニヤと憶測を語るのを楽しんでいる体のカイルはやはりとびきりの悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「飼い主って一部結晶化してるじゃないッスか。もしかしたら、あれって伝染るとか?ほら、ゾンビに噛まれたらゾンビになるとか言う映画あるじゃん?でももしオレの予想が当たってたら長期戦ってかなりマズイことになりますけど!だってオレ達、これから何度もあの晶獣とその飼い主と戦うッスからね!」

 一理ある。晶獣の増殖経路が不明である以上、ゾンビよろしく何らかの方法で仲間を増やしている可能性があるからだ。班員の誰もが深く考えようとしなかったが、一部晶獣化――否、カイル命名、結晶化している《RuRu》の構成員も気になる。最初はドーピングかとも思ったが、もし伝染しているのならそれは人事ではない大問題だ。

「ギルさん?ギルさーん、いきなり固まってどーしたんスか?」
「・・・いや。それよりカイル、お前が意外と歳食ってるのは嘘じゃなかったんだな」
「はい?」

 ――少し考えた方が良いかもしれない。
 もし感染症の類に分類されるのであれば班員を病という危険に晒す事となる。現状、機関にとって状況はあまり良く無い。4班が全滅している以上、これまでより戦闘任務が回ってくるだろう。
 となってくると、結晶化が感染症になると方法を考え治さなければならなくなるだろう。

「ギルさん、食べ終わったなら片付けましょうよ。あ、オレが持って行きましょうか?トレー」
「はぁ・・・」
「何で溜息吐くんスか?ねぇねぇ!」

 2班の行く末はあまり明るく無いようだ。忙殺されて皆忘れているようだが、問題が山積みである。とにかく、別任務で出ているドルチェ達が帰ったら今のカイルによる考察を話してみよう。