第2話

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 現在の時刻、午後1時過ぎ。
 変な時間だからか、はたまた任務の連中が多いからか食堂は閑散としていた。厨房と繋がっているので寛ぐには少しばかり適さない場所であるというのも一つの理由だろう。
 トレーを持ったまま手頃な席に着く。
 別任務は珍しい事ではない。2班は個々が強い力を持っている集団――言い方は悪いが、とにかく戦闘向きの人外を一つの班に詰め込んだ寄せ集め集団である。連携がやや苦手なのはそのせいだ。故に、全員が同じ任地である事など年に数回ある程度である。
 ドルチェとサイラスがいるのならば怪我人は出ないだろう。が、4班全滅事件が引っ掛かる。重傷者は多数出たようだったが、幸い死亡者は出ていない。ならば意識が回復し次第、事情を聞くべきだろう。

「あれ?ギルさんちわーッス!今昼ッスか?生活リズム、あまりちゃんとしてないんスね」
「・・・カイルか。1時に昼食は言う程可笑しくないだろう」

 ほくほく顔でうどんを持った新入りは躊躇うこと無くギルバードの正面に腰掛けた。場所は幾らでもあるのに相席する気満々過ぎて指摘するのですら忘れてしまう。出会って数日しか経っていないはずなのに不思議と昔から班にいたような違和感の無さだ。
 割り箸を手にするなり、不満顔をしたカイルは脹れっ面でベラベラと話し始めた。

「ふぁー、暇ッス暇ッス!オレもイーヴァに着いて任務行きたかったッスぅ!」
「さすがにお前みたいな新入りが2人もいたらサイラスの胃が焼き切れるだろうな。ただでさえ今流行の大型新人が2人も入って来たんだ」
「棘のある言葉に後輩は涙が止まらないッス!」

 うふふ、とカイルが不気味な笑みを浮かべた。何か企んでいるのがありありと分かるような、露骨過ぎる表情。今からとんでもない事を言うぞ、そう如実に物語っている――

「知ってるッスよ、ギルさん、本当はイーヴァと一緒に任務行きたかったんスよね!?独り身同士、仲良くしましょうよ!」

 ――その件に関して、この新人に何か話した事があっただろうか?
 不意に掠めた違和感。イーヴァ似のあの子との間に生じた軋轢を僅かとはいえ知っているのはドルチェだけだ。レックスにさえそんな話はしていない。変に気を揉むのは分かっていたし、そもそも訊かれなければ答える気も無いからだ。
 つまり、ドルチェ以外の班員は人間であるイーヴァと混血であるイーヴァの関連性について一切合切知らない事になり、そんな発言が出て来る事すらないのではないだろうか。
 呑気にうどんを啜る『後輩』に視線を移す。口が非常に達者で空気も読める、普通の班であったなら『相談しやすい人物』に当たるような存在。
 まさか――いや、無いとは思うのだけれどドルチェが口を滑らせた?それとも、新人の彼の方に何かある?