第2話

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 待機室、或いは待機所と呼ばれる部屋。そこでようやく今回の任務責任者であるドルチェとの再会を果たした。艶やかな笑みを浮かべた魔族の彼女はひらり、手を振ると歓迎の意を示す。

「やっと来たわね。どう?ギルには会えたかしら?」
「はい。声は掛けました」
「そう!きっとギルも喜んでいると思うわ!あーあ、任務さえ無ければこのまま午後から街へ繰り出すつもりだったのに・・・。昼中に悪かったわね、イーヴァ」

 ドルチェさん、とサイラスが非難がましい目を向けた。これから仕事だと言うのに士気が下がるような事を言うな、とでも言いたげである。

「それで、ドルチェさん。結局俺達の任務は何なんだ?」
「あら、聞いてなかったの?《RuRu》率いる晶獣の討伐が今日のお仕事よ。まあ、《RuRu》っていう勢力が割れた事以外はここ最近の仕事と変わらないわね」
「じゃあまた雑魚相手って事か・・・ま、怪我しないように気を引き締めて――」
「もう!堅い話は止めましょ?」

 どこで戦闘するつもりなのだろうか。この近辺は裏山くらいしか目一杯暴れられる場所は無いが、都合良くそこに敵が現れるわけがない。彼等は前回の襲撃からして人が多い場所に好んで晶獣を放っているようにさえ思える。

「不安そうだな、何か忘れ物でもしたのか?」

 サイラスが顔を覗き込んできた。彼は自分とカイルに対して、まるで子供のように接するのを早急に改善した方が良い。自分はともかく、外見からは想像も付かない程にカイルは歳を取っているのだし。

「忘れ物していませんが・・・市街地での戦闘になるのですか?」
「それは基本的には無いわね。この間がちょっとした例外だっただけよ」

 言いながらドルチェ先導の元、待機室を後にする。彼女は勿体付けたような笑みを浮かべた後、意外にも分かりやすく組織の内事情を口にした。

「機関も一枚岩ではないのよ?あたし達は戦闘向きとして売り出している2班だから戦闘職ばかりこなしているけれど、敵を誘導、偵察する班だってあるわ。例えば吃驚人間ショーの7班は民間人のふりをして市街地に紛れている事がほとんどだし、彼女達は戦闘には参加しないの」
「びっくり、人間・・・ショー・・・?」
「超能力だったり、ちょっと普通は持っていないような力を持っている人間の集まりよ。混血も多少はいるのかしらね。あそこ、謎の宗教乱立してて人間ってホント不思議・・・願掛けって言ってたかしらね」

 あの子達の事は良いのよ、とドルチェはそう言うとやはり微笑んだ。

「つまり、あたし達はすでに敵が誘導された裏山で戦闘すればいいの。少数精鋭組織、それが2班よ。ま、手柄云々で揉めた事もあったけれど」
「裏山はこの近辺でのびのび暴れられるように弄ってあるからなぁ。レックスさんが大暴れするから・・・」

 はぁ、とサイラスが盛大な溜息を吐く。が、魔術を操る種族であるエルフの混血が周囲を破壊せずに戦えるかと言われると微妙なのではないだろうか。