第2話

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「好きな食べ物はあるのか?」

 黙々と食堂へ歩を進めていた時だった。不意にギルバードがそう訊ねてきたのは。沈黙を好む性質なのかと思っていたが違うらしい。彼を除く、ドルチェとレックスは明らかに沈黙を嫌うタチであったが、寡黙な獣人のギルバードがそうでないのは少しばかり意外だったと言えるだろう。
 問いの答え、それに少しだけ思考を巡らせたイーヴァは淡々と言葉を口にした。

「特にはありません。が、魚類は食べられません」
「そ、そうか・・・。それはまた、どうして?」
「共食いになりますし、生理的に受け付けません」

 紛う事なき本心であったが、ギルバードはくすくすと可笑しそうに笑みを溢している。馬鹿にしているのだろうか。「馬鹿にしているのですか」、そう聞こうと思った直後だった。対面から見知った顔の人物が現れた。

「あー、いたいた。イーヴァ、仕事の時間だぞ!」
「何でしょう」

 サイラスだ。そんな彼は用件を告げた後、申し訳無さそうな顔をギルバードに向けた。

「悪い、ギルバードさん。何かお楽しみ中だってドルチェさんが言ってたんだけど・・・今から俺達、任務で」
「何がお楽しみ中だって?というか、やはりドルチェの差し金だったか」
「私はドルチェさんにギルバードさんを呼んで来るように言われただけなのですが」

 いまいち会話が噛み合わない。任務で呼びに来たらしいサイラスは首を傾げているし、何事か悟ったらしいギルバードは遠い目を。イーヴァ自身は会話の流れに着いて行けず首を傾げている。

「ある意味、初任務だな。イーヴァ」
「・・・?この間も――」
「レックスのせいで、ほとんど何も仕事が無かっただろう?怪我をしない程度に頑張って来るといい」

 何か保護者みたいだな、とサイラスが苦笑した。成る程、的を射ているようなそうでもないような。
 同じく苦笑したギルバードからやんわり背を押された。

「イーヴァ。ドルチェに勘違いするような事を言うな、と伝えておいてくれ」
「はい、了解しました」

 そのまま自分とサイラスを場に残し、ギルバードは足早に視界から消えていった。余程お腹が減っていたのだろうか。