第2話

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「――まぁ、呪われているな」

 長い長い思い出。まったく色褪せないそれを辿り終えたギルバードは不意に呟いた。マリィの最期の言葉はいまだに耳にこびり付いて離れない。そもそも、人魚の方はまだ生存している可能性が無い事もないのだが。
 捜しに行ってみようか。現状がある程度落ち着いて、長期の休暇が取れるようになったら。なお、最後の長期休暇は7年前である。一時は事態が落ち着く事など無いだろう。
 中身は永遠に空のままであろうロケットペンダント。女々しくもまだ持っているそれをポケットにしまった。こんな場面誰かに見られようものなら一ヶ月以上ネタにされてしまう。

「さて、どうしたものか・・・手掛かりは――」

 何から調べればいいのか分からず天井を仰いでいると良すぎる耳が小さな足音を拾った。一定のリズム、特に急いでいるわけでもなければ資料を探しに来るような迷いのある足取りでもない。
 それは真っ直ぐ自分の元へ向かって来ているように錯覚した。人捜しに来ているのに急ぐ気の感じられない足音はあの子にそっくりだ――

「こんにちは。昼食は摂りましたか、ギルバードさん?」

 本棚の陰からふらりと姿を現したのはイーヴァだった。挨拶もそこそこに意図の読めない問い掛けをされ、困惑する。

「・・・そういえばまだだが・・・」
「では、食堂へ行きましょう。現在の時刻は午後12時53分です」
「あー、昼飯の誘いかまさか」
「そうらしいです」

 苦笑する。恐らくはドルチェの気遣いだろう。こうしてまんまとイーヴァに連れられて食堂へ行けば魔族の彼女が待っているに違い無い。恐らくは買い物へ付き合えとの要請だろうが、今回だけは乗ってやろうと思う。粋な計らいに免じて。

「・・・行くか」
「はい?」

 低い位置にある少女の頭をぽんぽんと撫で、踵を返す。何も進展は無かったが、折角の休日だ。このまま図書室に籠もって過ごすのは勿体ない。