第2話

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 イーヴァにいっそどうするか訊ねてみようかとも思ったが、彼女に問いに答えるだけの力は無いだろう。一刻の猶予も無いし、信じたくはないがもう手遅れだというマリィの言葉は真実である事をようやく脳が処理しだした。

「ボーッとしないで、早くして!確かにあたしは人外だから多少は動けるけれど、誰かを担いで運べる程じゃない。あなたが元気なら、あなたがイーヴァを運ぶべきだわ!」
「同意していないのに海へ沈める手伝いをしろと!?」
「・・・水掛論ね。じゃあ、あなたには他に良い手があるのかしら?無いのなら、大人しくあたしの言葉に従って!」

 耳障りな喘鳴。それはマリィから発されたもので、確かに平気そうな振る舞いをしているが彼女もまた負傷している身。
 今まで散々イーヴァを優先に考えてきたが、助かる見込みがあるのであればマリィを優先すべきではないだろうか。少なくとも、民宿の主は2人仲良く全滅する事を望んではいないだろう。
 ――しかし、彼女が海へ還るのに、イーヴァを連れて行く理由があるだろうか。動けるようだし、こっそり裏から海へダイブすれば解決するのでは?
 ギルバードの思考を読み取ったように、目を伏せたマリィは言葉を紡ぐ。

「一緒じゃないと、意味がないのよ。あたしがいなくなった後、あなたはどうするつもり?やる事と言ったら事態の隠蔽と、あとはイーヴァの墓穴を掘るくらいしかないけれど」
「墓穴・・・」
「悪いところじゃないわよ、海。全ての生命が生まれ、還る場所なんだから。次の人生にこうご期待、ってやつ。誰に掘り返されるか分からない場所に埋めるより、あたしが連れて行った方が良いと思わないの?」

 抱き上げたイーヴァから生気は感じられない。もう長くは保たないだろうし、話している間にいつの間にか死亡していたっておかしくはなかった。頭が急速に冷めていく。そう、押し問答している場合では無いのだ。
 渋々――本当に渋々、ギルバードは頷いた。マリィがしつこかったのもあるが、このまま家の中で何も出来ずにイーヴァの死を看取るのは気が重い。『何かをした』という大義名分が欲しかったのかもしれない。
 ああそうだ、と不意にマリィが足を止めた。スカートのポケットから何かを取り出す。

「これ、イーヴァからあなたへ。遺品になってしまうかもしれないわね?」
「物騒な・・・というか、いいのか?これは。俺が貰って」

 差し出されたのはいつか、イーヴァが上機嫌に持って帰って来たロケットペンダントだった。彼女にとってのお守りであり、同時に目標に色を着ける為のジンクス的なそれでもある。
 受け取るのを躊躇していればマリィから半ば強制的にそれを握らされた。彼女は強引が過ぎる、特に今日という日は。
 貰ったそれをポケットに突っ込み、イーヴァを持ち上げる。それを見届けた人魚がくるりと踵を返した。向かうは彼女の水替えの為によく降りていた、あの切り立った小さな浜辺だ。