2-16
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翌朝、イーヴァとアルマの3人で朝食を摂っていたギルバードは未だに身の振り方を決め倦ねていた。残った方が良いような気がしないでもないが、今日の仕事はキャンセル出来そうにないし、信用に関わるのだ。
「そういえば、今日の予定はどうなっていますか?お昼は必要ですか?」
不意にイーヴァがそう訊ねた。恐らくはアルマに向かって。
一つ頷いた男は暫く考えた後、こう答えた。
「そうですね・・・では、私は今日は海へ行ってみましょうか。やはり実物を見てみなければ何故ここで人魚伝説が生まれたのか説明できませんし。昼食は外で摂って来ますよ」
家の中にいないのならば差ほど害は無いかもしれない。ようはマリィが見つからなければそれでいいのだから、アルマが外に出ている間に自分が行って帰ってくれば解決する。
「ギルバードさんもお出掛けですか?」
「ああ。出来るだけ早く帰る」
「・・・?そうですか」
何で早く帰って来ようとするんだろう、そんな顔をされて苦笑する。事の重大さを分かっていないとは思っていたが、彼女の反応はこの町が如何に平和であるかを物語っているようで微笑ましささえ覚えたのだ。
「先に失礼する」
早く帰る為には早く出る必要がある。
そう思い、食器を素早く片付けてそそくさとギルバードは家を出た。
――そもそも、自分の勘に従い、民宿から出なければ良かったなどと後悔する事も知らずに。
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日は高い。丁度昼食を終え、人々が思い思いの事をして寛ぐ午後3時と言ったところか。
「何だ、これは・・・」
優雅な午後。しかし、眼前に広がるのは1人午後の時間を過ごすイーヴァの姿でも、風呂場に行ったせいでもぬけの殻になってしまったロビーでもない。
少なかった私物がひっくり返され、テーブルはたたき割れているし引き出しは上から下まで全部開いている。置いていた装飾品はやはり粉々に破壊されており、窓なんかも1枚残らず割れていた。
そして何より――イーヴァの姿が見当たらない。