第2話

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 不定期に取れる休暇。それは大変貴重なものであり、同時に『不定期』なので突然仕事が入ったりとあまり気の抜けない休暇でもある。
 現在は得体の知れない敵に狙われていたり、またすぐに仕事が割り込む事だろう。そう考えると果たしてこれは休みと言えるのか虚しい気分になってくるが文句は言えない。
 本部にある仮の自室にて休暇の話を受けたサイラスは悩ましげな溜息を吐いた。
 この『休暇(仮)』みたいな休みは遠出が出来ない。次はいつまた召集が掛かるか分からないからだ。という事は買い出しをするか、本部で日がな一日時間を潰すかのどちらかくらいしかやる事が無い。
 ――もういっそ、買い出しついでに人に会って来ようか。
 最悪、着く前に呼び出しが掛かるだろうが先程も述べた通り、次はいつまた休みになるか分かったものじゃない。だとしたら、最近は顔を出していないし忘れられないうちに遊びに行って来た方が良いだろう。

「よしっ!」

 俄然やる気の出て来たサイラスは適当に財布とかを詰め込んだバッグを片手に部屋を出た。出て、そして驚いて足を止めた。

「うわっ、ドルチェさん!?」
「何よ、人をお化けみたいに言って」
「俺に何か用とか?」
「いいえ?あたしはみんなの予定を聞いて回っていただけよ。買い物へ行こうと思っているのだけれど、良い荷物持ちはいないかって」
「イーヴァを誘えばいいんじゃないか?」
「いやね、彼女に荷物は持たせられないでしょ。あなたは・・・今からどこかへ行くみたいね」

 ドルチェはすでに出掛ける準備を終えている。街という名の戦場へ繰り出す気満々だ。買い物という大義名分をぶら下げてはいるが、彼女に同行するのは憚られる。今までの経験からして彼女の買い物は長い。時間単位――否、日にち単位で時間を取られる事は目に見えている。
 ので、お洒落な魔族の彼女には悪いが首を横に振った。

「そうそう。俺は今からちょっと出るから買い物には付き合えないな」
「うふふ、まぁたあの子に会いに行くの?あなた飽きないわよねぇ。ロマンチスト、とでも言うのかしら」
「う・・・」
「人気のない別荘に隔離されたご令嬢・・・。良いわね。とっても良いシチュエーションじゃない!」

 一頻りにやにやと嗤ったドルチェにポン、と肩を叩かれる。

「じゃ、上手くやりなさいよ。あたしはどうせ暇なレックス――いえ、今回はもしかするとギルが連れるかもしれないわね。あの辺りを誘って出掛けて来るから」

 ひら、と手を振ったドルチェが足早に過ぎ去って行く。案外あっさり解放してくれた事にサイラスは安堵の溜息を漏らした。