第1話

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 いつもの待機室にたどり着いてみれば自分達以外のメンバーはすでに全員揃っていた。サイラスが酷く疲れた顔をしているのはきっと見間違いじゃないだろう。
 自分達の後について入って来た職員は緊張を露わに口を開く。

「今回の任務について、説明しても?」
「手短に頼むぞ」

 机に突っ伏しているレックスが無茶な要求を突き付けた。ドルチェは溜息を吐き、気にしなくて良いと言いつのる。

「時間が無いようだから変な事を言わないでちょうだい、レックス」
「俺は3行以上の任務は記憶出来ん」
「マジかよカッケェ、レックスさん!」

 馬鹿にしているとしか思えないカイルの言葉が沈黙を気まずいものへ変える。ごほん、と咳払いした職員は付き合っていられないとでも思ったのか淡々と書類を読み上げた。エドが仕事の合間に作成したのだろう。やる気はないが仕事そのものは出来る人間なのだ。

「主な任務内容は晶獣の討伐です。民間人の避難はすでに続行中、2班は関わらなくて結構だそうです。敵が強い可能性がありますが、新人を連れて行くようにとの事です」
「なに?今来たばかりの可愛い子達を連れて行けって?」

 異を唱えたのはこれまたレックスだった。やる気無さそうに話を聞いていた彼は身体を起こし、本格的に抗議の声を上げる。

「危ないだろ?4班が壊滅するような相手がいるというのに、新人を連れて行く?折角うちに来てくれたというのに、また増員する羽目になるわ」
「うう、それは自分に言われましても・・・」
「嫌だ嫌だ、ここは古参メンバーで行くべきだ」

 子供のように駄々を捏ねるレックス。新入りとはいえ、この2班に入って来た彼等を置いて任務に行くのは正直あり得ない。ので、エドの指令は最もである。

「ちょっと、みっともないわ。ねぇ、あなた達?大丈夫でしょう?」

 カイルが満面の笑みで頷いた。それがちょっとした不安を煽る。

「オレ、全然平気ッス!つか、見た目程子供じゃないんで子供扱いされるのはちょっと!まあ、相手強くても何とかなるッスよ、多分!」
「そうですね。そもそも、私達はここへ戦闘任務をこなす為に来たので参加を拒否されるのは困ります。そろそろ出発しなければ、時間が勿体ないですよ」

 何だよぉ、とレックスが鼻を鳴らす。完全にアウェーである事を悟ったのだろう。ここで、それまで傍観に徹していたギルバードとサイラスが声を揃えて言った。

「まあ、レックスさんが新入りが怪我しないように真面目に働けばいいさ、ね?」
「行くぞ。時間が押している」

 ああもう、と駄々を捏ねるのを止めたレックスが跳ね起きる。
 どうやら《RuRu》は本部そのものを強襲するつもりだったらしい。喧騒がビルにまで届いている。隠密行動には優れないらしい。