3.





 2つ目の盗賊団拠点にて、トラブルが発生した。
 それまでは順調に事を進めていたのだが、ここに来て躓いた。というのも、原因はたった一人の介入によるものである。
 ノエルは痛くなってきた頭を押さえ、呟いた。

「何でここにいるの・・・イアンちゃん・・・」

 えへへー、とギルドメンバーである戦闘狂は笑った。朗らかな、にこやかな気分になるような笑顔だった。

「えっとー、何だか・・・・この人達がー因縁吹っ掛けてきたんですー・・・・」

 死屍累々。
 彼女は拠点の中から現れたが、彼女が歩いて来た道には盗賊団と思われる屍が築き上げられている。一体イアンの中で何が始まっていたというのか。
 困惑するノエルを余所に、このカオスな状況を呑み込む事で打破したらしいヴォルフが少しだけ顔をしかめながらも尋ねる。

「あー、イアン。お前は中から出て来たな?まさかすでに盗賊団は壊滅しているんじゃ・・・」
「そうですねー・・・たぶんそんなことに・・・・・・なってるとー・・・思いますよぅ」
「そうか・・・。ところでイアン――」

 何やら会話を始めた二人を余所に、ノエルは隣で爆笑している灯船に視線を移す。何が彼のツボにはまったのかは知らないが、とても愉快そうだ。笑い転げる灯船を心底嫌そうな目で見ているのは緋桜。本当に仲が良いんだか悪いんだか分からない二人だ。

「ええ性格しとるわ、イアンちゃん・・・!あの子の奇抜さは応援したくなる何かがあるなぁ」
「お前に応援されたって嬉しくないだろ」
「どうしてそんな酷い事言うんや、緋桜!」
「純然たる事実だよ」

 ふん、と鼻で嗤う緋桜。彼女はいつだって女の子の味方なのだ。
 やがて、ヴォルフと話が終わったのかイアンがトコトコとこちらへやって来た。

「あぁ、イアンちゃん。今から表向きは人捜しクエストに行くけど、一緒に来る?」
「それはいいな、さすがは私のノエル!着いて来いよ、イアン。割と楽しいぞ」
「えへへー・・・。女の子が揃うのって・・・・久しぶり・・・ですねー。もちろん、あたしもー・・・・行きますよぅ・・・」

 戦闘狂が仲間に加わった。
 ――ただのチート集団が完成した。