2.





 翌日、早速組んだパーティーで依頼についての作戦を話し合う。これが討伐系統の依頼ならば話は早いのだが、如何せん表向きは人捜しクエストである。行き当たりばったりなど言語道断。
 よって、ロビーに集まった4人は机を囲み、頭を突き合わせていた。

「捜している女性の情報を言え」

 口火を切ったのはヴォルフ。相変わらず眉間には深い皺が刻まれている。灯船が緋桜大好きなので今日も彼はノエルの隣だ。
 へらっ、と緊張感のない笑みを浮かべる鍛冶士。

「女でアクセサリーを注文したって事しか分からんのや」
「捜しようが無いだろう、そんな情報!真面目にやれ!!」
「そう怒らんでええやん・・・。せやなぁ・・・若いお嬢さんやったよ?銀でペンダントつくれ言うくらいやから金持ちかもしれんな」
「曖昧だなぁ」

 呆れ返ったヴォルフの表情が見ていられなくなり、それとなく口を挟む。ふん、と緋桜がそれを鼻で嗤った。

「やっぱり片っ端からそれらしい所、あたるしかないだろ。灯船なんか宛にしてるから悪いんだ」
「お前の言う事はもっともだがな、緋桜・・・。今、そういう現実は知りたくなかった」
「私もだよ・・・」

 手掛かりはほぼゼロ。灯船が唯一、客の顔を覚えているだけだ。第一ここまでくるとイリーナという名前も本名か怪しいものだ。匿名だろうと何だろうと報酬さえ払えば働く鍛冶士のやり方はそろそろ変えなければならないかもしれない。
 ――そこらへんはアーサーに話して要検討、ってところだが。

「この件に関してはアーサーに報告するからね、灯船さん」
「えぇ!?嫌や!あいつ、怒ったらめっさ鬱陶しいねんぞ!」
「知らないよ。だいたい、トラブル起こす方が悪いじゃん」
「せやけどぉ・・・」

 なおもぐずぐず言っていた灯船を無視。代わり、頭を抱えているヴォルフに視線を移した。彼は何でも型どおりにこなそうとする人で、やや臨機応変さが足りない。こうして予想外の事が起きるとすぐ立ち止まってしまうタイプなのだ。
 この面子だとヴォルフを如何に上手く乗せるかが要なので、とりあえず彼には早く立ち直ってもらわなければならない。

「まぁまぁ、分からないものは仕方ない。緋桜ちゃんの言う通り、片っ端から洗ってみようか」
「ノエル・・・お前、この辺りにどのくらい盗賊団がいるのか知って言っているのか?」
「知るわけないでしょ。私、僧侶なんだから」

 盛大に溜息を吐かれた。