4.





 この絵をどこへ運ぶのかは知らないが、どこへ運ぶにしたって、そう簡単にいかないのは自明の理である。

「アーサー・・・どうにかしてよ」
「言われなくても分かってんだよ!」

 『強盗』。今度は二人組だ。こちらを見て、困惑したような顔をしている。当然だ。一カ所に安置されていた、お宝を非力な僧侶が持っているのだから。ともあれ、彼等を前に貴族は冷め切った表情をしていた。

「さっき来た人と同じ服着てるよこの人等。仲良いのかね」
「知りませんよ。同じグループに所属している、という意思表示じゃないですか」
「投げやりだねぇ」
「どうでもいい事ですから」

 紺色のベスト。同じ色のズボン。
 ――何だか引っ掛かる。

「下がっていなさい、ノエル。巻き込まれれば命はありませんよ」
「また、そうやってすぐに脅かす!心配しなくても安全な場所でにやにやしながら見てるよ」

 ――気になる事もあるし。
 心中で呟き、強盗達から距離を取る。巻き込まれて怪我をするのだけは嫌だ。
 ずっと訳が分からない、と言わんばかりの顔をしていた強盗達が得物を取り出す。腕の関節までぐらいの長さの、鉄製の棒。
 警棒みたいな。
 ――あれっ!?いやいや、待てよ・・・。この人達、警備のおじさんっぽくね?
 気付くや否や、心臓が不整脈を打ち始める。ベストも何もかも、どこかで見た事があると思えば、制服じゃないだろうか。
 だとしたら、同じ服を着ていてもおかしくない。だって、制服だから。そして彼等は業務中なのだから。
 ダラダラと変な汗が頬を伝う。けっして、暑さによるものじゃない、主に身体の不調を訴える時のような冷たい汗。
 さっきまでは好きにさせていたアーサーを見やる。
 すでに一人、床に伸びていた。というか、魔道士であり剣士でもある彼を前に警棒などという初期装備のような得物で勝てるはずがない。あんなもの、熱魔術で熱伝導させられたら大惨事である。
 ――が、アーサーに魔術を使用する気配は見られない。音がするし、何を使ってもだいたい派手なので人を集めたくないのだろう。
 すぱんっ、といっそ歯切れ良い音を立てて最後の一人が沈黙。
 あまりにも呆気なく、二回目の戦闘は幕を下ろした。

「行きますよ」
「・・・はーい」

 ――何とかして、正常そうなレインとコンタクトを取らなければ。