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「お待たせしました。とりあえず、情報の共有でもしておきましょうか」
アーサーが帰ってきた。それにより、イアンが起床。
「長かったな。何の連絡してたんだよ」
「いえ、思ったより厄介な事になっていましてね。少し、警備の配置に口を挟んで来たのですよ。そうしたら、遅くなってしまいました」
「止めとけって、そういうの・・・あの館長、ただでさえ神経質そうなオッサンだったのに」
「ったくよぉぉぉ・・・あのクソジジイ・・・絵が大事じゃねぇのかよ・・・」
ぶつぶつと何かの拍子にスイッチがオンになったのか、苛々と呟くアーサー。自称紳士の神経は針の上に立っているようなもので、ひょんな事からすぐ機嫌が悪くなるのだ。
しかし彼の反応から見て、やはり館長はド素人らしい。警備の配置に彼が口を出すなんて前代未聞である。
「まぁ落ち着いて。いいから早く、連絡を話してくれない?」
「そうですよぅ・・・あたし、また眠くなってきちゃいますからー・・・」
「分かってる!話すから1回で聞けよ愚図共!」
そうして苛々スイッチをオフへ。直ぐさまいつも通りの似非紳士に戻ったアーサーが蕩々と説明する。
「警備は我々の目に見えない場所に配置させました。というのも、人数が随分少ないようなので、はっきり言って宛になりません」
「えぇ!?大丈夫なのそれ!」
「大丈夫ですよ。何の為に私達がいると思っているのですか、ノエル。ま、平たく言えば味方以外は全て敵です。全力でブチのめして構いません」
目に見える範囲にいる、仲間以外の人間は全て敵。
――これは、いくらなんでも・・・。
「雑過ぎるよアーサー。ってか乱暴過ぎ!」
「おや、私は本当の事を言っただけですよ。何せ、我々には怪盗が1人であるのか複数であるのか、それすら分からないのですからね」
「言われてみればー・・・そうですよねー。だってー・・・脅迫状には、人数なんて書いてませんでしたしー・・・・」
脅迫状に書かれていたのは要求と時間だけ。ならば、それが1人かもしれないし10人、20人いるのかもしれない。あくまで、想像上の産物だが。
チッ、とレインが一つ舌打ちする。
「にしたって作戦、杜撰すぎだろ。もっと他に言い様はねぇのか」
「美しく言おうが汚く言おうが、結局は同じ事ですから」
「・・・なぁ、アーサー。お前、紳士とか言うのもう止めねぇ?無理してキャラ作る必要は無いんだぜ?」
「お黙りなさい」
ようは、と貴族は嗤う。邪悪に、酷く悪びれたように。
これでは、どちらが悪役なのかさっぱり分からない。
「仲間以外の全員をブチのめせば問題ねーんだよ」
やっぱり怪しい。そう言いはしなかったが、そんな顔をしたレインを、ノエルはもちろん見逃さなかった。