2.





 しばらくして、アーサーが館長に呼ばれたので控え室には誘われた3人だけが残っていた。
 すでにイアンは夢の中。気持ちよさそうに規則的な寝息を立てているから、起こさない限りはずっと寝たままだろう。今のうちに眠らせておいて、持ち場についたら起きてもらえばいい。その方が寝落ちする可能性を低く出来る。

「・・・なぁ」
「どうしたの、レインくん」

 難しい顔をしたレイン=ブラウンが、やはり眉間に皺を寄せるという難しげな顔で口を開く。

「この依頼、色々おかしくねぇか?誘ったアーサーの手前、何も言わなかったが、奴も何か思ってるだろ」
「さぁね・・・金に糸目を付けないだけかもしれないよ?」
「本当にありそうで恐ぇな、それ」

 美術館の警備依頼。このクエストが明らかに可笑しい事には気付いている。恐らく、アーサーも。ただ金を貰えれば何でもいいのか、彼は何一つノエル達に指示を出していないが。
 だが、常識人のレインは納得しなかったらしい。犯罪の片棒でも担がされているんじゃないか、と疑っている事だろう。何て美しいチーム愛。

「とりあえず、俺の忠告を聞けよ、ノエル」
「はいはい。何でございますか魔道士様」
「本気で言ってんだけど!」

 いいから早く話せ、と言えば一つ咳払いしたレインがちらりとイアンの方を盗み見る。彼女が眠っている事を確認しているらしい。

「ノエル、お前、時間より少し早めにアーサーのとこへ行け」
「えー。何でよ」
「何でもクソもねぇよ。いいからそうしとけって」
「あー・・・確かに、今日のアーサーは怪しいもんね。監視ってこと?あれが馬鹿な事やらかさないように?」
「うんうん、そうそう」
「どうしてそんな苦々しい顔するのさ」

 非常に形容し難い風に表情を変化させたレインは何か言いたげな顔をしていたが、結局は何も言わなかった。諦念の色がちらついているから、話しても無駄だと思ったのだろう。失礼な奴だ。

「まぁ、アーサーの奴もまさか僧侶の私に手を挙げたりなんかしないでしょ。大丈夫、ちゃんと見張っておくから!」
「いやいや・・・アーサーが本気で何かやらかそうとしてるのなら、お前がいたって止めらんねぇだろ。馬鹿か」

 ――もっともである。