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任地である集落に着いたのは出発して半日も過ぎた頃だった。西日が目に痛い。結構長く歩いたのだと分かる。ただし、痛覚そのものは無いらしいので気怠い感じはするが足が痛いなどという感覚はなかった。便利なようなそうでもないような。
簡易な木の塀で覆われた集落の一角が開いているのが見える。そちらへ進んで行くと若い男2人が立っていた。見張りとかではなく、出迎えらしい。歓迎するムードを僅かにではあるが感じる。
「話は通ってるみたいですね。さ、ちゃっちゃと話を聞いてきましょう」
「それはお前の役目じゃないだろ。下がってろ愚図!」
「何かジルヴィアさん、さっきから俺に当たり強くないですか!?」
微笑ましいじゃれ合いを尻目に、集落へ更に近付くと男の片方が中へ引っ込んで行った。
そこでようやくもう片方の人物に話を聞く。
「魔物を始末しに来てくれたんですよね?すぐ長老が来ますから・・・あ、来た来た。長老!こっちですよ!」
杖をついた高齢の男が先程まで入り口に立っていた男と共にやって来た。歩みはカタツムリのように遅いが急かすのも大人げないので黙って待つ。
「いやぁ、こんな何も無い所へようこそ。・・・と、言いたいのですが、アレが見えますかな?」
よろよろと杖から手を離し、遠くを指さす。釣られて背後を振り返ればやって来た道とは逸れた場所。そこの木々が大きく揺れているのが見えた――否、揺れているのではない。ゆっくりゆっくりと倒れていく。薙ぎ倒されているのか。
村からの距離、目算300メートル。そう離れていない。
休憩は必要だろうか。それとも、荷物だけ降ろして現場へ向かうべきだろうか。ぶっちゃけ自分の体力はもう限界だ。戦闘員達はまだまだ元気そうだが果たしてその運動量に着いて行けるか。
そんな打算はすぐに打ち消される事なった。肩に微かな重みがのし掛かる。デジャブ。
「行くか。休んでいる暇は無いようだ」
アルハルトの口から紡がれた言葉は明らかに自分へと向けられている。一応、他メンバーに休まないでいいか問い掛けてみるも案の定誰一人として休憩を提案しはしなかった。
「夕飯前の運動に丁度よさそうですね!あ、疲れているようでしたら護衛に付きますよ、ジルヴィアさんが!」
「ふざけるな。あたしも行くに決まってるだろ、何でこの鈍臭い奴の面倒を見なきゃならないんだ。剣聖が見てくれるだろうよ」
「アルハルトさんでしたらもう向かいましたよ。うわ、足速いなぁ」
よろしければこれを使って下さい、そう言って若い男が引っ張って来たのは荷台だった。これに乗れと言うのか。まぁ、確かに楽そうではあるが――
「うわ、ありがとうございます!じゃあエディスさん、乗って下さい!俺押しますよ!」
「付き合ってられないな。先に行くぞ。あたし達の腕を確かめたいなら精々早く追い付く事だな!」
何だかんだ言いつつ最後まで待っていたジルヴィアが身を翻す。アルハルトの姿はもう見えなかった。これではデルクだけ出遅れる事になるが――
恐る恐る荷台に乗る。掴まる所が無いが大丈夫だろうか。振り落とされたりはしないだろうか。
「行きますよ」、という爽やかな声が聞こえた同時、ガクンと車体が揺れる。そのまま視界も大きくブレた。結果的に言えば振り落とされる心配はあまり無かったと思う。遠心力の関係で持ち手の部分に延々ともたれ掛かったままだったからだ。
――しかし、一言良いだろうか。酔いそう。