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裏の森林にて。
――おかしい。何でこうなった。
4人体制。その最後尾を歩いている自分は首を傾げていた。背には大きなリュックを背負い、手にはレリアが私の為に用意してくれたパソコンなる機械を持っている。正直重いし、この人形の身体に体力なんて概念があった事にも驚きだが、とにかくすでに息が上がっている。
そして眼前を歩いている部下達。一泊すると言ったはずなのに全員軽装だ。小さなリュックを持っているだけだし、そもそも体力があるので山道をひょいひょい越えて行く。置いて行かれそうなのだが最後尾を陣取ってしまった故に声を掛けなければ誰も歩を緩めてはくれないだろう。
ふと、前を歩いていたジルヴィアが止まった。釣られてその半歩前を歩いていたデルクの足も止まる。
「待てアルハルト。エディスが限界みたいだ」
先頭を歩いていた剣聖がのろのろとこちらを向く。彼も当然このハードな運動をものともしておらず、息が上がっている自分を見て首を傾げていた。体力は一般人寄りだと察して欲しい。
「大丈夫ですか、エディスさん。背負いましょうか?」
「甘やかすな。というか、お前はどうしてそんなに大荷物なんだ?・・・仕事道具?キャリーバッグでも買ったらどうだ」
「ジルヴィアさん、この凹凸の激しい道でキャリーはちょっと。旅行じゃないんですから」
負ぶわれるのはまずい。食事も出来るし体力限界値もあるが、身体を密着させるとやはり「これは人間の熱じゃない」、と伝わってしまう。レリアにもそれは忠告されている。機械と人体では根本は異なるのだと。
仕方無いので頑張って歩く、という旨を伝えればジルヴィアが酷く面倒臭そうな顔をした。
「それはいいが、大幅なペースダウンだな。着いて来ない方が良かったんじゃないのか?」
――ご尤もです。
しかし責任者には責任者としての責務がある。部下とはいえ、彼等は他国からのレンタルに他ならないのだ。傷を付けずに返す事が出来るならそれに越したことはない。
話し込んでいる事に気付いたのか結構進んでいたアルハルトがわざわざ戻って来た。
「・・・手荷物は持とう。・・・?軽いな」
半ば奪い取るようにパソコンを攫われる。手伝ってもらっている身で烏滸がましいが、精密機器なのでぶつけないようにお願いした。「分かった」、という上の空な返事が聞こえてきて震えが止まらない。
「何だアイツ、スカした奴だな」
「ホントですよね。女性の荷物持ってあげる優しさとか・・・いや本当にスカしてますね。俺がすればよかった」
とりあえず進みませんか。そう言うとジルヴィアに般若の形相で睨まれた。正直すいません、と思ったのは最早必然だろう。