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翌朝。
指定された場所へ向かうとすでに4名――そう、何故か4人の人間が立っていた。聞いていた話の倍の人数がいるのだが。
ただしその内2つは見知った顔だった。
1人は部下、デルク。ニコニコと人当たりの良い笑みを浮かべ、隣の長身の男と何か話をしている。もう1人は病室で自分を迎えた彼女だ。オドオドして周囲をキョロキョロ見回している。
「あ!エディスさん。もう体調は平気なんですか?」
一番にこちらに気付いたのはデルクだった。手を大きく振っている。そこで例の彼女も安心したらしく、小さく息を吐いていた。絶大な信頼を得ているようで悪いがそんなに仲良しだったっけ、私達。
続いて初対面の面子。恐らく彼等が国王の言っていた『集めた人材』なのだろう。貫禄が違う、貫禄が。
「ふん、お前がここの責任者か」
口を開いたのは女性。灰色の双眸に淡い色の赤毛。伸びた肢体は力強く、凛々しい顔は確かに美女と呼ぶに相応しい。にしては少し仏頂面が勿体ない気もするが。
「エディスね、エディス。あたしはジルヴィアだ。帝国出身。お前、ひ弱そうだな。あたしが鍛えてやる。・・・何?戦闘は専門外?・・・じゃあお前は何をする為にいるんだ」
「エディスさんは執務ですよ。任務を受け取る、割り振るのが仕事です。バックアップですから。戦闘狂のジルヴィアさんは戦闘の事だけを考えていていいそうです」
「貴様・・・喧嘩を売っているのか?」
「え?」
「えっ」
さっそくデルクがとんでもない地雷を踏んでしまったようなので、気付かなかったふりをしてもう一人の――さっきまでデルクが話し掛けていた男の方を見る。彼はぼんやりと遥か遠くの空を眺めていた。大丈夫か。
と、長身の彼がこちらを向いた。同じく灰色の双眸で、銀の長髪だ。儚げな印象があるが、目測190センチ越えの大男である。そんな彼はぼんやりした目をこちらへ向けて信じられない言葉を宣った。
「・・・迷子か?」
いやいや、今までの流れ聞いてました?聞いてませんね、ありがとうございました!
瞬時に彼がどういった人物なのか理解してしまって精神が不安定になってくる。大丈夫かな、この面子。あと一人女の子がいるっちゃいるが、彼女も危機管理能力に難があるとしか思えないし。
一から事情を説明する。ぼんやりしてはいるが、聞いていれば内容はちゃんと理解出来るらしい。我ながら相手の事をバカにし過ぎている、と思っていた。彼の名乗りを聞くまでは。
「そうか。君がこの部隊の責任者か。・・・・・・・ああ、俺はアルハルト。負けはしないだろう、好きに使ってくれ」
――剣聖。
確認するまでもない。王国に存在する3人の剣聖の一人だ。会った事は無いが、名前と噂だけならたくさん知っている。話題に事欠かないのだ、彼等は。言葉の端々に滲む絶対の自信を否定する気にもならない。
よくこんな化け物捕まえて来れたな。国王の笑みが脳裏を過ぎる。そうだ、案外やり手なのだ。我等が陛下は。
「ところでエディスさん、任務って俺達は何すればいいんですか?」
――ごめん待って、まだ紹介終わってない子いるし、君がどうしてここにいるのかの理由も聞いてない。