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――ふざけんな。
正直にそう思うし、実際にそう言った。目の前の教師は笑みを崩さずそんな彼の発言を完全にスルーしてのけたが。
夏休み。授業は休み、自由な時間が一ヶ月あまりもある休みの事だ。避暑目的で作られたそれは学生にしてみれば楽しみだし、楽しみでなくとも事業が無いというだけで幾分か気が休まる。
「――で、何で俺がコイツと任務に?休みだ、つってんだろアホか」
「文句言うのよくないアル。そもそも、お前いつも休みみたいなもんだろ不良が」
「学校には来てるし授業も他の奴等より出てるっつの」
「一緒だろ」
ペア任務を受ける際の相方である1個下の学年――2年のファンメイ。彼女はクソ生意気である以前に先輩を敬う気がまるでない。2年と言えば話の通じない連中ばかりなので深く追求した事は無いが。
ともあれ3年のエアハルトは心底深い溜息を吐いた。何故この暑い中、脳味噌が最初から溶けているとしか思えない怪しげな言葉を使う小娘と任務へ行かなければならないのか。
「じゃあ、任務の説明を始めるからよく聞くんだぞ」
「行かねぇ、つってんだろ」
「・・・うーん、じゃあ行くなら君の前期の成績点。足りない分をこれで補おう」
「・・・あ?足りてねぇの?」
「足りてないね。5点程。後期で挽回出来ないと留年になる」
ザマァ、と笑い転げるファンメイに殺意さえ覚える。学園側は何故こんな阿呆と自分を組ませたのだろう。ぶっちゃけ、知的な女の方が好みである。いや、好み以前にこんな雌ゴリラは論外なのだが。
というか――
「テメェ、笑ってるとこ悪いが完全に俺の道連れだぞ。可哀相に」
卒業点が足りないエアハルト、そしてそのペアが任務に駆り出された事は明白。そう思えてくるとむしろこちらが笑えてくると言うものだ。案の定、ファンメイがピタリと笑うのを止める。
「ハァ!?ふっざけんなヨ!てめぇ、ちゃんと勉強しろヨ!アホじゃなくて馬鹿アル!ばーかばーか!!」
「よーし、そろそろ任務内容を聞こうか」
痺れを切らした教師が口を挟んだ。とりあえずは喧騒が鎮まる。
教師が告げたのは何とも夏休みらしい任務内容だった。ピッタリ嵌りすぎて逆に怪しいくらいに。
「実はね、夏のバイトに行った生徒2人がそのまま帰ってないらしいんだ。たぶん、というかほぼ確実にそのバイトで何かあったみたいだから捜して来てくれる?」
「夏のバイト?冷やし中華とかアルか?」
「いや、お化け屋敷の閉店後点検バイト。ね?ビックリする程怪しいだろ」
――んなあからさまに変なバイトをしようとするな、アホか!
心中で叫んだエアハルトはしかし、それを溜息に変えると場所と時間を問うた。
「時間は閉店後だよ。不確定要素が多いからね。開店中に中を捜させてくれ、って言っても受け付けてもらえなかったんだ」