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お化け屋敷というのは元来人を怖がらせる為に造られたホラーハウスである。シーズン的にも今が一番稼ぎ時だろう。
――が、夜中のお化け屋敷とはなかなかに壮観なものである。もうすでに中へ入りたく無い。このまま引き返してしまいたい。
ちらり、とアルヴィンは隣に立つレティシアという名の同級生を見やる。彼女に怖がっている様子は無く、「頑張るぞー」などとそれなりの意欲を垣間見せているようだ。怖じ気付いて帰ろうとか言い出さないかな。
「いやぁ、アルヴィンくんが着いて来てくれて助かったよ。こんな場所、口頭で説明されても私じゃ辿り着けなかったと思う」
「・・・フン」
――まあ、こんな所普通だったら近寄らないからな。俺も正直見つけられる自信無かった。
という呟きは胸の奥に仕舞い込む。結果的には辿り着けたのだから何も問題無いだろう。
「行くぞ。遅刻する」
「はーい」
中へ入るとすぐにスタッフの一人が出迎えてくれた。お化け屋敷の中は迷路になっているらしいし、すれ違うのも馬鹿らしいので当然の処置だろう。
「あのー、バイトの――」
「あっ、ああ!バイトですね、バイト!えーと、じゃあ内容を説明しても?」
「・・・受かってたのか、応募」
さっさとバイト内容を説明しようとするスタッフ。しかし応募用紙を送っただけで、合否は知らされていなかったはずだ。さらに言うと自分達以外のバイトがいる様子も無い。
スタッフは乾いた笑いを溢した。連日の勤務で疲れているのだろうか。目の下の隈がひどい。
「あーっとですね、バイトの応募されたの、貴方達2人だけなので・・・。面接するまでもなく合格という事になりますね。しかも、聞けば学園の生徒と言うじゃないですか。優秀な生徒さん達がバイトに応募してくれて感謝感激ってやつですよ・・・」
「・・・」
――2学年の噂を知らないのか、コイツ。俺がお前だったら絶対に面接するぞ。
この時期になるとバイトをする生徒が増えるのだが基本的に学園生である事を明かせばどんなバイトの面接にも受かる。ただし2年を除いて。悪い噂が絶えない程度には街の中でアノリア学園2学年は有名なのだ。
いよいよ本当に胡散臭いバイトになってきた。隣に立つ転校生を一瞥する。彼女はこのバイトに何の疑問も感じていないようだった。