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 Aクラスへ行けば、案の定アルヴィンは机で何か作業をしていた。他の生徒達も個人作業、個人的な趣味などに没頭しておりとても殺伐とした空気を放っている。どの学年もAクラスは別格らしい。
 臆することなくズカズカ教室へ踏み込んだレティシアは世話役の前で立ち止まり、小さく声を掛けた。他の生徒への迷惑にならないよう一応配慮した結果だ。

「・・・何だ」

 微かに眉間に皺を寄せたアルヴィンが問う。そんな彼の前に例のチラシを差し出した。怪訝そうな顔をした世話役がそれを手に取る。

「バイトでもするのか。で、用件は何だ?」
「えーっと、バイトしたいんだけど・・・その、地図が読めなくて。これってどの辺り?」
「ハァ?」

 心底不機嫌そうな声を出したアルヴィンだったがそれ以上は文句一つ言わずチラシの橋に書かれた地図へ視線を移す。暫くしてくいっ、と微かに首を傾げた。

「お化け屋敷の・・・業務終了点検バイト?変わったバイトだな」
「そうかなぁ?ようは、終わった後のお化け屋敷を点検すればいいんでしょ。楽勝だよ!」
「・・・というか、時給1500円・・・怪しすぎるだろ・・・」
「一緒に行って欲しいわけじゃないから、気にしないで。ただ私はその場所が――」

 うるさい、と手だけで言葉を制される。険しい顔をした彼は一時何か思案していたようだったが、ややあって深い溜息を吐いた。

「いい。俺も応募しよう」
「えっ。何故!?」

 思いもよらない提案に思わずそんな本音がこぼれ落ちる。小さく目を見開いたアルヴィンはしかし、瞬きの刹那には常日頃浮かべている鉄面皮を顔に張り付けていた。

「怪しいだろ、こんなバイト。学園にも変なバイトだったら報告しなければならない」
「・・・・えーっと、心配して着いて来てくれるって事デスカ?」
「今の台詞をどう解釈したらそうなる」

 ふん、と鼻を鳴らしたアルヴィンがチラシを突っ返す。

「来週だな。一度学園へ来い。どうせここからの方が近い」

 ――冗談かと思ったが本気で着いて来るつもりらしい。