プロローグ

2.



 兵士訓練の学園。創立20周年を誇るその施設は毎年優秀な兵士を輩出し、軍に多大なる貢献をしている――
 その中でも17歳から19歳の4期生卒業シーズンが今である。年齢にバラつきがあるのは優秀な者から次々に学年を上げられ卒業してしまうからだ。当然、平均的には17〜19歳が多いものの、年によっては16だの15だのとやや若い生徒が混ざっていたりする。
 さて、日は変わってモンスター討伐という『卒業試験』翌日。
 ヴェーラは学園の会議室に呼び出された面子を見て安堵でもあり、嘲りでもある盛大な溜息を吐いた。

「溜息か!?溜息なのかヴェーラ!この目出度い日に浮かない顔をしているなっ!!」
「パーシヴァルさん、ヴェーラちゃんはいつも浮かない顔してますよ。だから気にしちゃ駄目です」
「ヒイラギ・・・あんた、私の事をそんな風に思ってたのね」

 親友――ヒイラギの思わぬ言葉に瞠目する。人畜無害、超絶ポジティブシンキングと名高い彼女は時折度肝を抜くような一言を口にするので侮れない。
 ちょっと、とここで口を挟んだのはカイだ。澄まし顔でややキツめの口調だったが、バツが悪そうに顔を伏せる。

「ああ・・・いや、別にみんな注目するような事を言いたかったわけじゃないんだけど・・・」
「いいから、用件言えよ。聞いてやるから」
「え。・・・・ああ、いや、悪いねルーカス。だから僕が言いたいのはつまり、昨日の面子が同じ部屋に呼び出されたって事は決まったんでしょ?卒業順位」

 女絡み以外では比較的まともなルーカスの後押しもあり、6名の視線に怯んだカイは居心地悪そうな調子でそう言った。何を決まり悪そうな顔をしているのか分からないくらいには正論である。
 昨日の大型モンスター討伐は『卒業試験』。そして試験と順位は切っても切り離せない縁で繋がっているのだ。

「――あー、じゃあさぁ、そろそろ決めないとね〜。誰も被らないといいねぇ」

 他人事のように笑うフェリクス。その一言に居心地の悪い沈黙が漂った。
 問題はここから。呼び出された7名とはつまり、卒業順位上位者の1から7位である。今から始まるのは就職戦争。かつては手を取り合った仲間達との血で血を洗う争いである。