3.





「・・・リーダー・・・」
「君が・・・気にする必要は無いよ」

 掛ける言葉が見つからずにいれば、そう答えた由は目を閉じた。死んだ、というわけでは無さそうだがこのままでは間違い無く助からないだろう。
 その声でハッと我に返ったキリトが素早く部屋から出て行く。人を呼びに行ったらしい。
 そうして、ようやく正体不明・レクターが語る順番が来た。

「逃げるといい。さすがに王殺しはどうしようもない」
「けれど、レクター・・・」
「私は本職に戻る。やはり、暗殺業から足は洗えないらしい」
「ここに残るつもり?」
「いや。ただ、一緒に行動していれば、同罪になりかねないからな。私と君達は、無関係だ。そうだろう、王よ?」
「・・・」

 返事をするつもりが無いのか、返事が出来ないのか。由は口を閉ざしたままだった。
 舌打ちしたラグがクレアの腕を引っ張る。

「行くぞ」
「でも」
「正直、俺は――いや、真白も、この件に関してはあのレクターとかいうおっさんを絶対に赦さないだろうよ。お前が残りたいのなら、俺達は喜んでお前を置いて行くぜ」
「なら、置いて行けばいい」
「美緒に悪いだろ」

 クレアが何かしらの同意を求めるようにこちらを見る。一体、彼女は何と言われるのを望んでいるのだろうか。レクターを連れて、一緒に逃亡しろと?冗談じゃ無い。

「私はリーダーを殺すつもりなんてなかった。こんなの、度が過ぎたお遊びだもの。どちらかが妥協するまでは帰るつもりなんて無かったけれど、でもやっぱり、殺す殺されるつもりは無かったの」

 それが結論。ディラスは案外本当に王族殺しをやってのけそうな勢いだったが、ラグも真白も何もそこまでするつもりは無かった。そんな覚悟は無かった。話をつけるつもりだったのだ。

「行こう、ディラス。もうきっと美緒にもラグにも、あの人達にも会う事は無いわ。巻き込まれる前に」
「・・・ああ」

 あとをどうするつもりも無い。それは、あの場に残った人間が決める事だろう。