3.





 それを最初から最後まで見ていたのは真白のみだった。ディラスは唐突に叫んだ真白の奇行に目を奪われていたし、クレアとラグはキリトに掛かり切り。もちろん、キリトも目前に迫る特攻達をいなすのに精一杯だった。
 だから、事の顛末――呆気ない程にあっさりと終幕を迎えた顛末を説明出来るのは真白だけ。

「・・・え?」

 混乱している旨を思わず一文字で表したが、本当は何が起こったのか解っている。感情とは裏腹に頭の中が整理されていき、ようやく何が起こったのかを理解。
 事はこうだ。
 真白が大声を出した瞬間、由の背後の硝子が盛大に砕け散った。けれど、多分これは真白の《災厄》ではない。何故なら、割れた窓から人が飛び込んで来たからだ。
 それが誰なのかは、真白の知識には無い。ただ、以前――ディラスと出会って間もない頃に出会った暗殺者《黒鏡》のセドリックに似ている事だけが説明出来る唯一だ。ともあれ、飛び込んで来た男は間髪を入れず、後ろから王を刺した。以上が、今起こった事の全てだ。
 付け加える事があるとすれば、その手口があまりにも手慣れたもので、見ていた真白は窓が割れてから由が刺されたのだと認識したが、何も知らない者が見れば逆の手順かもしれない。
 と言うより、窓が割れた音に誰も気付かなかった事こそが《災厄》なのだろうか。

「・・・う・・・ぐっ・・・」

 中心からやや左の胸。その辺りから刃物を生やしたような状態の由。形の良い唇から真っ赤な鮮血が零れた。状況を察したキリトの顔が蒼くなる。一瞬の間を置いて、どさり、と生々しい音を立てて王が身体を流れる血と同じぐらいに赤い絨毯に倒れ伏した。
 そこで初めて唐突に現れた第三者をしっかりと確認する。
 お世辞にも若いとは言えない、初老に片足を突っ込んでそうな男だ。もちろん、似た面影を見た事はあるものの、記憶には無い人物である。

「――レクター・・・」

 茫然としたようにクレアが呟いた。ラグには聞き覚えのある名前であったが、それが彼女にとってどういう人物なのかまでは知らない。
 突如現れたレクターなる男が何か言葉を発しようとしたところで、その口を閉ざした。

「・・・ちくしょう」

 代わりに聞こえたのは床に倒れている由だ。自嘲気味な笑みを浮かべているのがよく分かる。