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ぞろぞろ入って来た兵士達は皆、手に手に武器を構えていた。由が笑顔で首を傾げているところを見ると、兵達の思いやりが今この状況に結びついたらしい事は明白である。
ディラスが無言ですでに手に持っていたヴァイオリンの弓を弾く。
苦笑したラグに何かをするつもりは無いようだった。ので、代わりに真白が口を開く。知っているリズムだったので、歌を合わせようと思ったのだ。
「――真白。いい、待っていろ」
「・・・そう」
《道化師の音楽団》を示す逆さ音符のブローチに気付いたのか、兵士の1人が「こいつ等は《ローレライ》だ」、と悲鳴に近い声を上げた。
途端、槍だの剣だのの切っ先がディラスを向く。しかし、それはもう手遅れと言うものだ。
「えげつないねぇ」
「そう言うなら、ラグも手伝えばいいわ」
「俺は病人だから。あまり無駄な事に体力を使いたくねぇんだよ」
「じゃあ、美緒がいればいいの?」
「おう。奴が来たら戦ってやるぜ」
来ないで欲しいけどな、というラグの呟きははっきりと真白の耳にも届いた。というか、来られるとこの場にもれなく全員揃ってしまうので確かに来たら来たで困る。
そうこうしているうちに、気付けば兵士の数は半分にまで減っていた。
クレアに身体能力強化を付けてようやく避けられる不可視の弦。重い甲冑を着込んだ一般兵がそれに対抗するのは、少々無理がある話だった。それを予想していたからか、ディラスに助けは断られたのだが。
「――真白、お前の・・・」
不意にディラスが首だけこちらを向けて何かを言い掛けた。が、その言葉は途切れる。高い音によって。
「・・・随分と騒がしい事になっているな、由」
「兵士には悪い事をしてしまったよ」
キリトが帰って来たのだ。しかも、どうやら彼もまた《ローレライ》らしく、不可視の弦は意味を成さなかったのか彼には傷一つない。
ようやく、ディラスが言い掛けた言葉の先を理解した。