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馬車から降りた瞬間、待っていたかのように甲冑を着た集団に取り囲まれた。前にも一度見た事のある、それは王国兵の装備である。ぎょっとして真白が立ち止まる。
しかし、真白以外の大人達は案外冷静なもので、むしろ「ああやっぱりこうなったか」、とでも言いたげな顔をしている。
「どうしよう・・・ディラス・・・」
「どうしようもないな」
にべもなくそう言った音楽家の視線は兵士の方へ移った。その中の一人が一歩前に進み出る。
「同行してもらおう!」
「・・・ああ、いいぜ!」
ラグがあっさりと応じた。マゼンダも異論は無いらしく、反論する気配は無い。ディラスだけが何を考えているのか分からない顔で一つだけ頷いた。
そうする以外には無さそうだ、とそう呟く。
「大丈夫なの?これ」
「どうだろうな。それは、お前の友人次第だ」
「・・・・」
ラグの方は殺される心配など無いとはいえ、ディラスと――あるいは、マゼンダにもそういう保証は無い。だから、ラグが軽はずみに同行すると言った時には軽く殺意すら湧いたが後の祭りである。
進み始める一団。真白は背が低いので体格の良い成人男性に囲まれてしまえば、見える景色は自身の頭上だけである。もちろん、青空が広がるばかりで王都の風景など一切楽しめない。
「どこに向かっているのか、見える?」
「――城、だろうな」
肩にあるディラスの手がとんとん、と揺れた。何だ、と顔を上げれば目が合う。
「やはり城へ向かっているようだな。まだ少し遠い」
「・・・そう」