3.





「でもやっぱり、私はリーダーに会わなければならないと思う」

 ディラスの説得を遮り、真白は意外にも強い口調でそう言った。常に無表情のディラスでさえ、少しばかりの驚きをその顔に浮かべている。
 それは、ディラスより付き合いの長い柊ことラグも同じ事で、「どうしたどうした」とオロオロしている。

「ラグは帰りたくないって言ったよね?」
「お、おう」
「私も帰りたくないわ。それには理由もある。それはきっと、貴方も同じ」
「まあ・・・理由も無く帰りたくない、なんざ言わねぇけど」
「ならきっと、リーダーやキリトにも帰りたい理由があると思う」

 真白、とそれこそ強い口調でディラスが遮った。

「ならばお前は、それに納得出来れば帰ると言うのか?」
「たぶん、納得する事は無いと思うけれど、話だけは聞いた方がどちらの為にもいい」
「だが――」

 ああもう、とラグがヤケになったように会話の流れを両断。そうして、必死な表情のままにこう進言した。

「行くのは百歩譲って許す。だから、王都へ行くなら美緒が帰って来てからにしてくれよ」
「何故?」
「あいつは今、クレアの誤解を解いてる最中だ。《宴》が俺達のいざこざで一番被害受けてるんだよな・・・仲間の仇討ち、つってお前等に仕掛けて来たろ?クレア」
「・・・覚えて無いわ」
「隣町へ行った時の事だろう」
「あれ、《宴》の序列上位共をまとめて殺したのはギルバートだ。つまり、間違いで仇討ちに付き合わされたんだよ、お前等」

 隣町へ行った時の事を思い返す。てっきり、美緒がクレアの力を借りる為に用意した、盛大なギミックだと思っていたが違ったようだ。偶然転がり込んできた勘違いを、利用しただけ。
 クレアと美緒のコンビは能力の相性が良いのか、かなり苦戦させられた。見方にいれば心強いが、どうにも真白には彼女が自分と共闘している姿を思い浮かべられなかった。

「――何にしても、もう待てないわ。どうせ行くなら、マゼンダの双子も助けた方がいいでしょう?」
「・・・真白、どうしても行くのならば僕も着いて行くが、行くんだな?」
「ごめん、ディラス」
「・・・アルフレッド。お前はどうする?」

 ことの成り行きを見守っていた《音楽団》のリーダーは一つ頷いて、そうして首を横に振った。

「俺は行かねぇよ。と言うより、行けないな。腐っても貴族。俺が王に反旗を翻すと、大事どころの騒ぎじゃなくなるぜ。ま、馬車の手配ぐらいはしてやる」

 つまり――結局のところ、行く人間としては最初に王都行きを決意した真白、それに従ったディラス、双子の救助目的のマゼンダ。そして。

「監督、っつー事で俺も同行な」

 監視役のラグ。