3.





 暫く何かを思案するように黙っていた真白はふと口を開いた。それは随分と話が進んだ後だったが、彼女は頓着しない。

「私――やっぱり、王都へ行くわ」
「正気か?いや、行かれると俺は困る」

 唐突な決意に面食らったラグがすかさず反対だと声を上げた。彼はこの世界に留まりたいのだ。故に、わざわざ危険因子たる真白が王都へ行くのを見過ごすはずがない。
 なおもラグが考え直すよう、真白を説得しようと試みた時、アルフレッドが尋ねた。

「結局、現王・アルバートはお前達の仲間なのかよ」
「ええ」
「奴の本名は淡嶋由。もともとは俺達のリーダー・・・と言うより、まとめ役ってところだな」

 こういうのは最年長者が務めるべきなんだろうけど、とラグは肩を竦めた。彼は例のメンバーでの最年長だが、見ての通りまとめ役には向かない。よって、リーダーという肩書きは由のものとなったのだ。

「とにかく、お前は変な罪悪感とかいいから。ディラスと旅に出るなら出てくれ」
「はぁ?それはあたしが困る、つってんだろ。誰が真白っち渡すか!」
「餓鬼の面倒見きれないからこうなったんだろうが、マゼンダ」

 啀み合うラグとマゼンダ。彼女も彼女で必死なのだろう、退く気配は無い。が、さらにここでディラスが唐突に口論に混ざった。
 ――というか、2人が喧嘩している間に、真白本人に絡んだ。

「真白、双子の事ならば放っておけ。お前が気に病む事じゃ無い」
「・・・でも――」
「奴等の身柄とお前の身柄は、僕にとって等しくはない」

 バラバラと話している面々。それを半眼で眺めていたアルフレッドが呟いた。それは、喧嘩している者達には聞こえないぐらいの声量だったが、真白は彼に近い席に座っていたので聞き取る事に成功。

「――リンネは結局誰に殺されたんだ・・・?」
「知りたいの?」
「まさか、お前達の誰か・・・じゃないだろうな?」

 冗談めかしてそう問うが、《音楽団》のリーダーの目はちっとも笑っていなかった。不穏な気配を感じ取ったのか、はたまた物騒な話題だけは聞いていたのか。アルフレッドの問いに、ラグが応じる。

「アルバートだろうぜ。《賢人の宴》ではないな。美緒から、そういう情報は聞いてねぇし」
「へぇ・・・お前が嘘吐いてる可能性もあるが、一応はその言葉を信じておいてやるよ、ラグ」

 その美緒、という人物には会った事が無いけど。そう言って、やはりアルフレッドは自重気味に微笑んだ。