3.





 キリトが入っていったのは数ある建物の中の一つだった。この時点でかなり危ない予感はしていたが、キリトの性格上、面倒事を引き起こすとは思えなかったのでマゼンダはのこのこ彼に着いて行った。

「――おい、帰ったぞ」

 少しだけ不機嫌そうな声でそう言ったキリトに応じるように、奥の部屋から男が出て来た。もちろん、マゼンダはそれが誰なのかを知らない。ただ、アルフレッドみたいに上品な男だな、と思った程度である。
 男はキリトを一瞥すると優雅に微笑んだ。

「ああ、お帰り。早かったね。こんにちは、《ジョーカー》・マゼンダ。僕はギルバート、よろしく」
「よろしく?いや、あたしは――」

 そこで、ギルバートと言う名前を思い出す。現国王の名前だ。
 マゼンダがその名前の意味を言及するより早く、ギルバートと名乗った男は話を始めた。

「イリスちゃんとイリヤくんを捜しているんだって?」
「・・・・」
「えっと、こっちで保護しているんだけれど――少し、頼みがあるんだ。いいかな?」
「・・・あたしを脅してるのか?」
「お願いしているんだよ、人聞きの悪い事を言わないでくれるかな」

 舌打ちしたい衝動に駆られたが、双子の安否が分からない以上、相手を挑発するのはよくない。瞬時にそう判断し、何の用だと問う。

「真白のね、身柄と君の双子を交換しないかい?」
「・・・真白・・・?」
「関係性は聞かないでくれると助かるなあ。ああ、大丈夫だよ。あの子を殺したり、何かしらの罪状で捕まえるわけじゃないから」

 ――どうする?
 そう訊いてくるギルバートは嗤っている顔で、それでもちっとも笑っていなかった。