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話は数日前に遡る。
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何日も留守にしている双子が気になったマゼンダはとうとう街にまで捜す足を伸ばしていた。こんな所にいるとは到底思えなかったが、それでも屋敷にいるよりは捜した方が良いと思ったのだ。
「おーい、イリスー、イリヤー」
やる気の無い声を出しながらキョロキョロと辺りを見回す。いるのは全然見た事も無い他人ばかりで、見知った顔は――ない。
せめてここが王都であったならば、顔見知りも少しばかりいたのだろう。が、残念ながらここはただの隣町。あまり立ち寄らないのでもちろん、知り合いもいない。
「あー。ちくしょ――」
「おい」
とん、と肩に手を置かれて足を止める。振り返れば何故か――そう、違和感を覚える程にどうしてだか、そこに立っていたのはキリトだった。王都の調律師である彼はディラスと同じく何を考えているのか分からない顔で突っ立っていた。
「ここで何をしてる?」
「そりゃ、こっちの台詞だっつの。お前は何やってんだよ、店放置して」
「野暮用だ」
「こんな小さな街で用事なんかあんの?」
――ああ、世間話してる場合じゃない。
脳裏に双子の顔が掠めたところで、マゼンダは会話を終わらせるべくくるりと背を向けた。
「じゃあな。あたしは今、人捜ししてんだよ」
「人捜し」
「そうそう。あ、お前、双子見なかったか?ちょっと行方不明なんだよ、今」
一瞬の間。まあ、こいつが知ってるわけないよな、と通り過ぎようと足を進める。
「――そういえば、見たぞ」
「え!?」
ややあって呟くような一言が耳に届いた。有力な情報を持っているらしい割には自己主張の足りない奴である。
ともあれ、マゼンダはそれに食いついた。
「どこ?どこで見たんだよ」
「・・・こっちだ」
何やらもの申したい、と言わんばかりの顔をされたが黙殺。