2.





「――真白っち!おーい、真白ー!いるかー!?」

 不意に部屋の外から聞き慣れた声がした。どこか気楽なその声に真白は顔を上げる。

「マゼンダ?」
「そうだぞー、開けろよ」

 ドンドンとノックする音がうるさいのでドアを開けてやる。やはりそこにはマゼンダが立っていた。ひらひらと手を振っているが――
 様子が変。有り体に言えば、違和感を覚える。何が可笑しいのかは説明出来ないが、何となく雰囲気に気圧されて、開けたドアを閉めようとした。が、それより早くドアが引き開けられる。力は言うまでも無くマゼンダの方が遥かに上なのであっさりドアは全開の状態に戻った。

「・・・マゼンダ?」
「楽しそうだな、真白っち」
「どうかしたの?」
「ちょっと来てくれよ、あたし、今、困っててさ」

 来てくれ、とお願いされているはずなのに引かれる腕の力は随分と強い。有無を言わせるつもりがないような力で、部屋から引き摺り出そうとしているのだ。
 というか――怪しすぎる。彼女が困っているのは変な事じゃ無いが、困っていて真白に頼るのがおかしい。歌う才能以外は同年代の誰よりも劣っているのは自覚済みである。

「ねえ、ちょっと、マゼンダ?止めて――」
「うん、ごめん」
「ごめんじゃなくて・・・」

 ずるずると部屋から引き摺り出される。もう抵抗を諦めた真白はせめてドアは閉めなければ、と空いた手で乱暴にドアを突き飛ばした。バタン、という音と共に荷物詰めの為散らかっていた部屋が見えなくなる。
 一体、彼女はどこへ向かっているのだろうか。とても嫌な予感がするものの、力の差が歴然と現れている相手を前に何と言う事も出来ず、ただ黙ってマゼンダの背を見やった。