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「真白がどうするのかが問題だ。あの口ぶりだと、あいつも強制になりそうだが」

 不意にキリトが呟いた。うんざりしているような、面倒だと言わんばかりの口調。それが面白かったらしく、ギルバートがクツクツと嗤った。

「前は良い子だったのにね、真白」
「最初からじゃじゃ馬だっただろう。俺の言う事はまったく聞かなかったしな」
「そりゃあ、君だけじゃないかい?・・・ああ、柊の言葉もあまり聞いてなかったかな」

 どのみち、真白は強制的に連れて来るしかないよ、とギルバートは首を振る。キリトが鼻を鳴らした。

「抵抗してはいるが、いざここまで来たら面倒になってそのまま場の流れに身を任せるのが真白だ。連れて来さえすれば問題無いだろ」
「――そうだといいけれどね。ところで、美緒と柊はどうする?」
「奴等は無理して連れて来るしかないな。そもそも、奴等が残ると言い出さなければ全ては丸く収まっていたはずだ」
「帰りたいとは言わないよ、彼等はね」

 口も挟めないような、まったく意味の分からない応酬が続く。しかし、『柊、美緒』という名前を出したところでキリトの顔が曇った。

「そうだな。柊達は帰りたがらないだろう。ここの環境は、奴等に優しすぎる」
「まあ、僕が向こうの立場だったとしても絶対に帰りたいとは思わないね」
「お前は鬼のような奴だな」
「何故、人類が全員幸せになれないのか。答えは簡単さ。その人にとっての幸福は違う人にとっての幸福にはならないからだ。・・・ってね」
「いつからそんな壮大な話になった・・・」

 さて、とギルバートがようやく双子の方へ向き直った。

「こっちもギリギリ、時間が無いんだ。そういうわけだから、君達は大人しくお迎えが来るのを待っていてくれ」