1.





 まあまあ、とキリトを宥めたギルバートは何故か可笑しそうに笑った。それは困っているようでもあったが、やはりどこか楽しげで。

「つまりさ――全体的に上手く行っていないって事?」
「・・・そうなるな」

 対するキリトの顔は渋い。あまりにも失敗続きなので嫌気が差しているような、そんな印象である。もう一度不気味に嗤ったギルバートの視線がこちらを向く。

「だそうだ。そろそろ君達の保護者が迎えに来る頃じゃないかな」
「上手く行ってねーんだろ」
「じゃあ来ないでしょ」

 反論するも余計に王は嗤うだけだった。

「何を言っているんだか。上手く行っていないから、君達っていうカードを使わなきゃならなくなったんだけどね」

 ――もっともな言葉に黙ったイリヤは次の質問を投げ掛ける事にした。
 最初から気になってはいたものの、優先度はあまり高く無かった疑問。そろそろ答えを知ってもいい頃じゃないだろうか。

「何の為にこんな事やってんだよ、あんた」
「そうそう。王様なのに」
「「コソコソする必要無いじゃん」」

 途端、ギルバートの笑みが消えた――否、正確に言うならばまだ笑っている。目、以外は。ああ、地雷踏んだなと思う前に王は口を開く。

「ねぇ、帰りたいかい?」
「答えになってねーぞ」
「帰りたいに決まってるでしょ」

 本筋に戻すのはイリヤ、双子の言葉を代弁するのはイリス。
 イリヤの言葉を受け流した王はイリスの言葉を拾い上げた。

「帰りたいのなら、今の僕と君達の気持ちはきっと同じはずだ」

 そう言った彼はやっぱりちっとも笑っていなかった。