1.





 こちらをちらりと一瞥した調律師は当然のように双子を無視し、国王に話し掛けた。そこに敬意などはなく、まるで友人だとか知り合いだとか、そんな間柄を感じさせる気安さだけがある。

「捜したぞ。出るなら誰かに言ってから出ろ、無駄な手間が掛かった」
「悪かったよ。まさかこんなピンポイントで行き違いになるとは思わなかったんだ」
「・・・場所を移すか?」
「いや、ここで構わないよ。彼等もきっと現状を知りたがっているさ」

 そう言って人の良さそうな笑みを浮かべる王だったが、平気で人を幽閉するような人物の笑みだ。残念ながら良い印象は無い。それどころかその行為そのものに怖気さえ覚える。
 何か言いたげに目を細めたキリトは結局何も言うこと無く、ただこちらを見つめたままにギルバートに淡々と報告のような言葉を紡ぐ。

「王命という名目で、学者を1人殺した。《黒鏡》を使ったからな、まあ、失敗はしていないだろう」
「それならさっき、報告を聞いたよ。報酬も渡した」

 それに、と目を伏せて溜息を吐いたキリトは苛立っているような、そんな気がした。いや、その表現も適当でないかもしれない。

「《宴》に流した件は失敗だな。ディラスを仕留められなかったし、何よりこれで奴等はもう利用出来ない」
「ディラス!?」

 聞き覚えのある名前に声を上げる。しかし、どうやら失敗したらしいキリトの言葉にイリヤはクツクツと嗤った。隣のイリスもニヤニヤと嗤っている。

「ディラスがそう簡単に倒せるわけないじゃーん」
「そうそう。浅いよね!」
「俺達も何度も闇討ちしたけど」
「無理だったし!」
「「きゃははははははは!!」」

 鬱陶しそうな目で睨んでくる調律師に笑いが止まらない。常に淡泊な印象を受ける彼が、人並みに焦り、面倒臭がり、憂鬱そうな顔をしているのは非常に愉快だった。もともと、彼とはそりが合わなかったし、いい気味である。

「あはは、怒ってるの?眉間に皺寄るよ」
「誰のせいだ・・・」