2.





 だが――
 目を眇め、散らばった資料に本の類を見やる。学者と言うより音楽家であり貴族でもあるアルフレッドにはよく分からなかった。こんなものを調べる事の何が楽しいと言うのか。いや、単なる趣味ならばそんな事、思いもしないのだろうが。

「ほどほどにしておけよ、リンネ」
「ええ、分かっています。我々は先王からの処刑命令が出ていますので」
「分かっててやろうって度胸が俺には理解出来ねぇよ」

 現王、ギルバート=ドウェインの父にあたる先王。彼は何の妄執に取り憑かれたのか、息子が異界へ帰ってしまうという謎の発言のもと、学者狩りを始めた。だが、そのギルバートが異界人であるかは別として、彼自身に帰るつもりなど無かったのではないだろうか。
 現に、ギルバートは王として君臨しているし、まるで父親が早々に死ぬのを知っていたようだった。何の躊躇いも無く王位に就いた時は戦慄したものである。

「ギルバート=ドウェイン、か。お前はどう思う、リンネ?」
「現王も恐らくは異界人でしょう。問題は、真白様と関わりがあるか否か。こちらへ来た時期はまったく異なりますが――どうなのでしょうね」
「何故、関わりがあるのかが問題なんだ?」

 もとの世界へ帰る為には条件があります、そう言ったリンネが一冊の本を抜き取る。分厚くて黄ばんだ、随分と古い本だった。

「50年前に現れた異界人は3名。彼等は帰りたいと願いましたが、この時代にはまだ帰る為の条件を誰も知らなかったのです」
「ほう」
「這々の体で条件を探し出した時にはすでに20年の月日が過ぎていました。条件は1つ、この世界へ飛ばされた人間を全員揃え、その状態で順序に沿った儀式を行うのですが」
「・・・ああ、オチを理解した」
「はい。何せ、20年も経っていましたから。結果的に言うと、儀式の途中で1人死んでしまったのです。病気だったのでしょうね。もちろん、残された2人は帰る事が出来ませんでした」
「全員揃う、ね。ふん。真白はこちら側だ。誰が帰ろうと知った事じゃねぇが、帰りたいのならばまずは真白をどうにかしなければならないな」

 それはそうと、とリンネが抑揚の無い声で問うた。

「これから、我々はどう致しましょう?」
「キリトにギルバート、ラグに美緒、そして真白――こいつらが動き始めてるのは知ってる。だが、敢えて干渉しようとは思わねぇな。こっちに火の粉が降り掛からない限りは傍観してやるさ」