2.





 翌日、ディラス、ラグ、真白の珍しい取り合わせは隣町に来ていた。朝ご飯も食べずに出発したが、存外と町は近くにあったらしく取った宿の1階で朝食を摂ることになった。

「ラグ、お前はいつまでいるつもりだ?」

 トーストを囓っていたラグが顔を上げる。何を考えているのか読めない笑みを浮かべた彼は水を一口飲むと肩を竦めた。

「今日はとりあえず朝飯食ったら出るぜ。夜には帰る」
「そうか」
「ンな恐い顔すんなって・・・悪かったとは思ってんだよ」

 サラダにフォークを着けたラグはそれを一気にかき込むと立ち上がった。もう出掛けるつもりらしい。真白としてもこれ以上ディラスの機嫌が悪くなると面倒なので、早々に出掛けてもらいたい。
 心中を察したのか、へっ、と笑ったラグは「じゃあな」とだけ言うとあっさり踵を返した。

「――それで、ディラスはどうするの?」
「僕もそろそろ仕事だ。着いて来るか、と訊きたいところだが今回はそうはいかないようだ」
「そう」

 深くは追求しなかった。仕事に何故どうしてと尋ねても意味など無いからだ。無駄な問答をするのは好まない。代わり、真白は別の事を尋ねた。

「何時ぐらいに帰って来るの?」
「夕方頃になるだろうな」
「えぇ・・・」

 それはつまり今から夕方まで真白は暇だという事だ。こんな仕事事情ならば、普通呼ばないんじゃないのか。人間関係に疎い真白でさえそう思う待ち時間の長さだった。

「ディラス・・・」
「何だ?」
「・・・・・いや、何でも無い」
「何なんだ。言いたい事があるのなら今のうちに言っておけ。僕もそろそろ行くぞ」
「何でも無い」

 本当は文句の一つでも言ってやりたかった。が、ラグの件があるので何となくこれ以上ディラスを困らせたくなくて口を噤む。
 ――思えば、人に所謂『思いやり』を以て接したのは随分と久しぶりかもしれない。
 以前の自分だったならばディラスを盛大に困らせていただろうな、何故かこの場面で自分の成長を実感した。