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「仕事で隣町まで行く事になった。もちろん、着いて来るだろう?」
「ええ。いつ出発するの?」
マゼンダ辺りによく『殺伐とした会話だ』、と言われる。あながち間違ってはいないだろう。極限まで無駄が省かれた言葉の応酬。
「明日だ。支度をしておけ」
「毎回毎回、どうしてもう少し早く言わないの?明日って、今日という時間はもうあと数時間しか無いのに」
「持っていくような荷物は無いだろう、真白」
「気分の問題よ」
「似合わない言葉だな」
「まったくだね」
心にもない台詞を冗談交じりに吐き出した真白はコーヒーを飲み干す。そうと決まれば早く明日の準備をしなければ。直前になってドタバタ慌てるのは好まない。
――が、ここで思わぬ客が乱入した。
「おーう、お前等、出掛けるんだって?」
「ラグ」
一連の事件の渦中にいる人物、ラグ。真白でさえもディラスが彼を快く思っていないのが分かるので、恐らくは相当険悪な仲なのだろう。彼等の友好関係など知ったこっちゃないが、巻き込まれるのならば話は別だ。
舌打ちしたい衝動を堪え、無感動に乱入者を見やる。悪戯っぽく笑う彼は真白の記憶にいるその人そのままだ。
「俺も連れてけよ」
「ハァ?」
これにはさすがの真白も閉口した。自分にしてはひどく挑発的な聞き返しだったと思う。それを裏付けるかのようにディラスが目を白黒させていた。
「予想以上に厳しい反応だぜ・・・。ホント、他意はねぇんだよ。俺も同行させてくれ」
「1人で行け。お前、旅するの好きだろう。僕達を巻き込むな」
「旅に出るわけじゃねーんだって・・・人と会う約束」
「なら尚更1人で行く事だな。僕はお前の面倒まで見きれない」
「なんで保護者面してんだよディラス。お前、ちょっと見ない間に保護者生活が板に付いてきたよな」
――一触即発。睨み合う二人を前に真白は心底迷惑そうな顔で空のカップを見つめていた。