1.





 そんなディラスに代わり、現れたのはマゼンダ。何やらきょろきょろと視線を動かして落ち着きが無い。関わるのは止めておいた方がよさそうだ――
 そんな真白の思惑を裏切る形で、マゼンダの蒼い瞳と目が合う。ああ、面倒な事になったなと心中で溜息を吐いた。が、ここで無視して通り過ぎるのも問題だと思い、足を止める。

「よう、真白っち。ちょっと聞きたい事あんだけどいい?」
「・・・何?」
「双子見なかったか?少し前から見掛けないんだけど」

 ――そういえばイリヤ達の姿をここ最近目にしていない。
 彼等は常に煩い、歩く騒音被害のような人物なので屋敷内にいるのならばすぐ目につく。しかしそれにも関わらず、彼等の姿は見掛けていなかった。部屋の中で大人しくしているような人間ではないのだが。
 一応は彼等の行方を思案した上で、真白は首を横に振る。

「見てないわ」
「そっか・・・あー、屋敷の外にいんのかね」
「帰っていないの?」
「そうなんだよ。かれこれ・・・2日?いや、3日だったかな。とにかくいないんだ」
「家出?」
「まさか。奴等、ここが家なんて思ってないさ」

 ――そういうものだろうか。
 疑問が顔に出ていたのか、マゼンダが笑う。相変わらず快活な、真白には分からないがそれは恐らく見た人間を元気にするような笑顔だ。

「真白っちはそう思ってんの?あたしはそうは思わねーけど」
「そう」
「そういえや、別世界から来たんだって?帰りたいとは思わないの?」
「帰って欲しい、って言ってるように聞こえるわ」
「え?いやいや、そんなつもりは無いさ。あたしは真白っちの事、大好きだからねえ」

 思ってもいない言葉で何となくはぐらかした――話題。
 そういえば、今まで微塵も考えたこと無かったなとむしろそう思えたのが、最早笑えた。