3.





「うーん・・・ま、もちっと捜してみるわ。悪かったな、邪魔して」

 それだけ言うとマゼンダもくるりと回れ右して部屋から出て行った。室内には屋敷の主と侍女だけが取り残される。
 部屋の外に誰もいない事を確認した上で、リンネが口を開いた。

「アルフレッド様、貴方様はいったいどこまで今回の件について知っているのですか?」
「単刀直入だな」
「言葉遊びは好みませんので」

 目を伏せたまま淡々と問う侍女に主は笑みを以て返した。《音楽団》のメンバーももちろん大切だが、リンネはメンバーよりも長い付き合いだ。今更彼女の不躾な質問に対して不快な気分になる事は無い。
 くつくつと嗤ったアルフレッドは大袈裟に肩を竦める。

「何でも知ってるぜ。ヴィンディアだって一枚岩じゃねぇ。後ろ盾も、情報網も、揃えてある」
「つまり?」
「ラグと真白――ひいてはキリトの関係性、《賢人の宴》で起こってる騒動もな」

 微かにリンネが顔を歪めた。彼女には何も話していないのでこれだけの言葉では意味が分からなかったのだろう。

「全部、知ってんだよ。が、今回はディラスが関わらない限り《音楽団》の案件としては取り扱わない事にしてる」
「というのは?」
「内輪揉めだからな。関わらないに越した事は無いだろ?」
「内輪揉め・・・つまりそれは、ラグ様と真白様の?」
「いいや」

 けれど、とどこか可笑しそうにアルフレッドは目を細める。

「ラグはともかく、真白は自分自身の指針を決める時かもしれないな」