3.





 でさぁ、とマゼンダが不意に声のトーンを落とした。何やら難しい事でも考えていそうな顔である。

「イリヤとイリス見てねぇ?あたし、どーも昨日か一昨日から見掛けてないんだけどあの二人。さすがにちょっと心配になってきたわ」
「双子か?俺は見てねぇな」

 そういえば煩い双子の姿をここ最近見ていない気がする。自由奔放な子達とは言え、保護者であるマゼンダのもとから長期にわたって離れる事など無いのに。何やかんや言っても所詮は子供である。
 アルフレッドがそう答えたのだから、自然と視線は何も言わないディラスへ向けられる。音楽中毒者が真白の事を気に掛けるように、マゼンダだって姉弟のように可愛がっている双子がいなければ心配なのだ。

「見ていない。どこかで油売ってるんだろう、気にしすぎだ」
「それ、お前だけには言われたくないよディラス」
「知らないものは知らない。それだけだ」

 相当に不機嫌なディラスに感化されるようにマゼンダもまた不機嫌そうに眉根を寄せた。どいつもこいつもカルシウム不足なのだろう。勘弁してもらいたい。

「どこかへ出掛けるとか言ってなかったのかよ」
「あたしは聞いてないぜ。つか、いつからいないのかもよく分からない。ふと、ああいないな、って思ったんだよ」
「はぁ?昨日もいねぇいねぇ、つってたろ?あれは?」
「昨日いないって事に気付いたのさ」

 それはつまり、昨日以前から双子が姿を消した、という意なのだろう。ここ数日、ラグが帰って来るだの色々な事があっていつからいないのかも曖昧だ。
 ――思った以上に深刻な事態かもしれない。
 脳が警鐘を鳴らすのを聞いたところで、何の前触れも無しにディラスが立ち上がった。

「僕はもう行く」
「おう、元気出せよ」

 あ、とマゼンダが声を上げたからか、中途半端に敷居を跨いだディラスの足が止まる。

「ディラス。お前、真白っちと出掛ける計画忘れんなよ!」
「誰がそんな約束すると言った・・・」

 溜息と共に荒々しくドアが閉められた。