3.





 自然とディラスの視線の先を追ったマゼンダが納得したようにああ、と頷いた。同時に浮かべる悪戯っぽい笑みに頭が痛くなる。彼女はいったい何を企んでいるのだろうかと。

「ラグと真白っちか。またアイツ等一緒にいるじゃん」
「・・・・」
「で?そんなんだから不機嫌なわけ、ディラス」

 問いに答えはない。けれどある程度の確信を以ているようで、マゼンダははしたないような笑みを一層深くした。
 アルフレッドも中庭の方を見てみるが、そこにはばっちり件のラグと真白が何か話し込んでいる光景が見えていた。もっと隠密に会ってくれないだろうか、屋敷の平穏の為にも。
 そういえば、と火に油を注ぐのはリンネ。無表情故に何を思って口を挟んだのかは知らないが主人の為にだけではない事は確かだ。

「真白様からラグ様の居場所を訊かれました、先程」
「そーいや最近よく一緒にいるよなあ。あの二人、初対面じゃなかったっけ?何か聞いてないの、アル?」
「知らねーよ」

 だよな、と笑ったマゼンダはそこで少しだけ目を眇めてその光景を見下ろした。

「ラグが一方的なわけじゃないんだよなあ。真白っちの方も、自分から関わってる感あるし」
「ついでに言っちまえばラグが一時滞在を宣言したのも今回が初めてだ。真白がここに来た時期と奇跡的に被ってるな」

 奇跡、の部分にたっぷりの皮肉を込める。しかしそれとは裏腹に偶然だからこそこうして被ったのではないのかとも思う。何かを勘繰られたくないならば、時期をずらすなり何なりもうちょっと考えるべきである。

「とりあえずさぁ、ディラス。ラグの事は置いておいて、屋敷の外に出掛けてみろよ。真白っち連れてさ。中にいるから絡まれるんだって」
「僕は彼等がどうしようと興味は無い。ただ、ラグが何かを企んでいるように見えるのが――気に入らない、な」

 そう言ったディラスはやはり不機嫌そうに刺々しい溜息を吐いた。