3.





 2階客間。アルフレッドは揃った面々を見て吐き出したい溜息をぐっと堪えた。仲間が屋敷内に大人数いるのは良い事だが、こういう面倒事が発生するのならば考え物だ。

「不機嫌だな、ディラス」
「そんな事は無い」
「お茶をお持ちしました」

 目の前ではディラスがいつも通りの仏頂面でソファに腰掛けており、その背後にはリンネが立っている。彼女もまた鉄面皮で何を考えているのか上辺から推し量る事は出来ない。《道化師の音楽団》には自己主張が激しい人間と自己主張しない人間のどちらかしかいないようだ。両極端過ぎる。

「もう連絡終わったからいつもみたいに音楽室に引き籠もっていいんだぞ?」
「・・・・」
「おーい、ディラス。聞いてんのか?」
「・・・・・・・」

 ご立腹の様子。窓の外ばかりを眺めているが、外に興味があると言うよりはただ気を紛らわす為に外の光景を見ているのだろう。
 そろそろ出て行って貰いたいが――

「アール!アル!ちょっと訊きたい事あんだけど!」
「・・・タイミング悪いなお前も」

 ノックも無しに部屋へ飛び込んで来たのはマゼンダ。相変わらず無駄にパワフルな動作だ。

「んん?何だよこの部屋、辛気くさい空気だな」
「ディラスの奴がいつまで経っても出て行かねぇんだよ。どうにかしろ――」
「ディラス何見てんの?」

 ――駄目だ。人間同士で顔を付き合わせているはずなのに会話が出来ない。