2.





「ねぇ、もうディラスに話してしまった方がいいんじゃない?だって、狙われてるんでしょ?」

 至極当然の事を口にしたはずだ。が、ラグは顔を曇らせた。それは許可出来ない、と言わんばかりに。自然と自分の眉間にも皺が寄るのを感じる。

「そりゃ出来れば止めて欲しいね」
「どうして」

 咎めるような口調になってしまったが、ラグは所詮この件に関してまったくの部外者。彼の指図を受ける必要は無いように思えた。肩を竦めた彼はやっぱり駄目だと首を振る。

「それやると、《内通者》ちゃんが痛い目を見る事になる。というか、俺の立場も悪くなるからなあ」
「知らないわ、貴方の立場なんて」
「ヒドい・・・。そうなってくると好き勝手出来なくなるし、色々融通利かなくなるし・・・良い事ねぇぞ。俺にとっても、お前にとってもだ」

 どうあってもこの話を他者に漏らしたくないらしい。冗談じゃ無いと思ったが、ここでラグに失脚されても困る。結局全てを自分の意志で決められないのが真白の集大成だ。
 仕方なく肩を竦め首を振る。もう話は終わりだと言わんばかりに。

「もういいわ。このままじゃ水掛け論にしかならないだろうし。それに、私が心配するような事でもなかったと気付いた」
「そうだろうな。音楽と全然関係ねぇ話だし、人の心配ってのはお前には似合わねぇ」
「失礼だね」
「知ってるだろ」

 溜息を一つ吐いたラグがくるりと踵を返す。もう用事は済んだから解散、という意だとすぐに理解した。
 同じく溜息を吐いた真白も彼とは反対方向へ歩き出す。
 目指すは――ディラスがいるはずの音楽室だ。