2.





「どんな人、か」

 一概には言えないな、とディラスは溜息を吐いた。答えにくい質問だったのだろう。だからといって、罪悪感なんてものは一切湧かないが。

「そう。私はあの人の事が知りたいわ」
「お前こそ珍しいな。音楽以外に執着するものがあったとは」
「執着?そうじゃないと思う。ただ、気になるだけ」

 我ながら実に意味深な言葉である。案の定、ディラスの無表情が眉根を寄せて困惑の色を示している。
 これは答えてくれないのだろうか――

「奴は《道化師の音楽団》の重鎮であると同時に、旅人でもある。戦わせれば強いし、能力を使わせればなかなかに使える奴だ。が、放浪癖があるからな。ほとんど屋敷にはいないだろう」
「だろう?」
「僕もあまり屋敷へは寄りつかない方だったから、アルフレッド達の情報から抜粋した。ちなみに僕はおよそ2年ぶりの再会だ」
「そうなの?それで、いつまでいるの?」
「・・・本当に珍しいな、真白。一時はいるようだが、それがどうした」

 そう、と呟いた真白は頷いた。

「放浪癖、治ったんじゃない?」
「癖は直らないから癖と言うんだ」
「でも、ディラスの放浪癖は直ったでしょ」
「矯正したにすぎない。お前がいなくなれば、僕はすぐにでも感性を養う為の旅に出る事だろう」

 ふむと少し考えを巡らせた真白は、特に意味もなくディラスへの助言を口にしてみる。

「私、ディラスが旅に出たいって言うなら着いて行くよ。屋敷にいたいわけじゃないから」
「そうする事も出来る。が、今は無理だ。色々立て込んでいるからな」

 もし遠くない未来、ディラスと共にこの屋敷を出て旅でもする事になったとして。
 それは存外と悪くないのではないだろうか、と思う。