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その後、仕事を切り上げてやって来たアルフレッドの一言で乾杯し、ようやく酒を煽る。毎日が休日のディラスに計画性、遠慮という言葉は無かった。久々に飲んだ酒だからか、際限なく飲み続ける。
グラス3杯目に差し掛かったところで、にこにこ笑顔のラグに肩を叩かれた。
「お前飲み過ぎだろ!本当に飲む為だけに来た、って感じだな!話に付き合えよ」
――もっともである。
仕方なく、眉間に皺を寄せつつもディラスはグラスを置いた。満足そうにしているのはラグだけじゃなく、この場にいる全員だった。周りの事を如何に気にしていなかったのかよくわかる。
もちろん、反省なんてするつもりもないが。
「それで、何だ?」
「おぅふ・・・話の流れをぶった切る名人だなディラス。だからさ、ラグの奴が真白っちについて訊いてたんだろうが」
「マゼンダ。僕はそもそも、話を聞いていなかったのだから今がどういう話になっているのか知るはずがないだろう。そこを踏まえた上で話を振れ」
「唯我独尊って言葉は実はお前の為にあるんじゃね?」
ははははっ、と笑ったラグはとくに気にした様子も無く再び同じ疑問を口にした。ディラスがその問いを聞くのは初めてだったが、アルフレッドとマゼンダは二度目である。
「真白ってどんな奴なんだよ」
「・・・そういえばお前は、あまり真白に絡んで来なかったな」
新人大好きのくせに珍しい、そういう意を込めて言えばラグは困ったように肩を竦めた。
「あー、なんつーか取っ付きにくいタイプだからなあ。声掛けるタイミング、逃しちまってよ」
「タイミング?そんなもの、見極められる奴だったか、ラグ」
「ディラス結構こう・・・傷口を抉るっつうか、抉った上に塩を塗り込むような奴だよな、お前」
「それはトドメだろう」
僕は人殺しではない、などという頓珍漢な事を言っていればアルフレッドに酔っているのかと訊かれた。どうなのだろう、久しく酒を飲んでいないから何とも言えない。
「で?どーなの、真白って」
「不愛想な奴だぜ。あと、ディラスに似てるな。俺のことが嫌いなところとか」
溜息を吐き、アルが肩を竦める。彼は割とナイーブな人間なので、ちょっとした事で落ち込んだり、そこは落ち込むところだろうというところで元気にしたりしている。
ひとまず、ラグの問いに答えるべくディラスは考えを巡らせる。
そこで気付いたが、最近、真白と一緒にいない時間の方が少ないらしい。
「最近は昼寝が好きらしい。やる事が無いのも問題だろうがな」
「昼寝?」
「あぁ。音楽室に来ては昼寝している」
「へぇ・・・外、連れて行ってやろうか?」
「何故お前は取っ付きにくい相手に進んで付き合ってやろうとするんだ」
「暇なんだろ?なら、俺が外で買い物にでも付き合ってやるよ。今は取っ付きにくい、って印象が強ぇけど慣れりゃあンなもん忘れるだろ」
真白が行きたいというのなら好きにすればいい、そう答えてグラスを傾ける。
どことなく困ったような顔をしたラグを見て、何となく違和感を覚えた。それが数年間会っていない溝なのか、あるいは別の何かなのかは判断出来ないが。