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音楽家であるディラスは、先程アルフレッドから聞いたこの話をどういう風に真白へ伝えるかに悩んでいた。というのも、彼女もまたディラスと同じく歌う事以外に興味の無い職人性溢れる少女なのだが、その彼女の印象に残るように伝えるというのは些か難しい。
しかしそんな彼の悩みはリビングへ入った途端、打ち消される事となる。
マゼンダと真白が座って話をしていた。
「聞けよ、真白っち」
「・・・」
「なぁんかさ、この間話してた――ラグ、覚えてる?」
「誰それ」
「だから、うちの古株の。で、そいつが今日の午前中には帰って来るらしいのさね」
「へぇ。急だね。もっとこう・・・何日か前に伝えるんじゃない?そういうの」
「いつもこんな感じだって」
「ふぅん」
温度差の激しい会話を壁に背を預けて聞く。真白はともかく、マゼンダの方はディラスの存在に気付いている事だろう。何も言わないという事は、真白との会話を邪魔するなということなのだ。
「そういえば、あの双子は?」
「あん?イリヤとイリスか?さぁな。どっか遊びに行ったんだろ。昨日から見てないよ」
「放任主義なのね」
「いや、あいつら奔放過ぎて面倒見切れない」
そこまで会話が進んだところで、ディラスの横をアルフレッドが通り抜けて行った。彼は何の気後れもなく彼女達の輪に入り、真白に非難の目を向けられつつも、何の話をしているのかと自然に問うた。
乱入者のせいで何となく会話が途切れたマゼンダが苦し紛れにディラスを呼ぶ。そんな所で立ってないで、こっち来いよと。
「なんでお前はお前で、ずっと立ち聞きしてたんだよ。混ざれよ。真白っちの目がきついんだよ」
そうぼやくマゼンダをスルー。
代わり、向かい側に座る真白を見やった。紅茶に角砂糖を三つも入れているところだった。
「ディラス。お前、ラグに会うの久しぶりじゃねぇの?」
「そうだな。僕の記憶が正しければ、恐らく2年と半年ぶりだ」
「驚きの事実だな。ホント、真白がいてくれてよかったぜ。じゃねぇと、そろそろマジで召集なんて面倒な事しなきゃならなくなってた」
そう言って肩を竦めたアルフレッドは真昼であるにもかかわらず、グラスにウィスキーをなみなみと注いでいた。疲れているのかもしれない。