01.
「うちって、どっちかつうと四天王っぽいんだぜ」
唐突なマゼンダの発言に真白は顔を上げた。いつも通りどこか怪しげな笑みを浮かべた赤い彼女は反応した真白に満足したのか、何度か頷くと訊いてもいないのにペラペラと話す。
「いや、《ジェスター》、《クラウン》、《ジョーカー》ときたら、《ピエロ》がいないと」
「何の話をしているのか分からないわ」
「あたしは真白っちのそーゆー冷め切ったところ、嫌いじゃないぜ!」
「そう」
つまり、と話を引き継いだのは新聞を読んでいたはずの《クラウン》ことアルフレッド=ヴィンディアだった。彼は現在お茶をしているホールどころかこの屋敷の主であり、《道化師の音楽団》の団長でもある。
余談だが、真白の苦手なタイプの人種でありよっぽどでなければ彼女から彼へと話を振る事は無い。
「うちには幹部格の《ローレライ》がもう一人いるって事だ。ラグ、っつうんだが・・・そーいやそろそろ帰って来るんじゃねぇのかな」
「マジかよ!へぇへぇ!久しぶりに全員揃うんじゃね?真白ちゃんがいてくれてるおかげで、ディラスの奴もふらふら出歩かなくなったし!」
「おー、そうだろうな」
「上等な酒、用意しとけよアル。飲み会しよーぜー」
「はっ!そこらへんに抜かりはねぇさ」
何だか子供が話を挟めない域に到達しているらしかったので、すっかり興味を失った真白はソファに腰掛けたまま静かに目を閉じた。昼下がりの陽気は眠気を誘う。
「あいつの放浪癖は何とかならねぇのか。今はそれでいいが、《賢人の宴》と全面対決する日もそう遠くねぇ気がするぜ、俺は」
「あー。でもラグの奴を引き留めておくのは無理だろ。いつの間にかいなくなってんだよなぁ。ディラスよりは甲斐性あって戻って来るだろうとは思うけど、いつも帰って来る時期まばらだしな」
「ディラスとラグが会うのは2年ぶりだぞ」
「あいつらの予定のあわなさは最悪だよな!どっちも帰って来る時期を合わせようとしねぇもん」
そこまで聞いたところで、真白の意識は完全に落ちた。